えあ草紙・青空図書館 - 作品カード
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学校教育における図書館の利用
がっこうきょういくにおけるとしょかんのりよう |
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作品ID | 46209 |
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著者 | 佐野 友三郎 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「個人別図書館論選集 佐野友三郎」 日本図書館協会 1981(昭和56)年9月7日 |
初出 | 「帝国教育 第四一〇号」1916(大正5)年9月 |
入力者 | 鈴木厚司 |
校正者 | 小林繁雄 |
公開 / 更新 | 2008-01-31 / 2014-09-21 |
長さの目安 | 約 17 ページ(500字/頁で計算) |
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一
「学校の教育は如何に完備し充実すとも、米国のごとき国柄に在りて民衆の需要を充たすに足るべしとは想われず。されば在学中も、卒業後も、不断の読書をもってこれを補充せざるべからず。この補充的読書は、すべての民衆に、無料なる選択宜しきを得たる集書あるにあらざれば充分なる能わず、指導もまた能く行わるべきにあらず。」
「カーネギー氏その他の援助により最近二十五年間に図書館設置の進歩顕著なりしに拘らず、合衆国民の大多数は今なお依然として相当の集書に接すること能わず、人口二万五千以上の都市の大多数と二万五千以下の都市の多数とは、優良の公共図書館を有すれども、これら図書館の大多数は都市の区域内または附近郊外在住の民衆の用を弁ずるのみ、小町村及び郊外在住者の大多数は今なお図書館の便宜を有することなし。巡回文庫は全国を通じて到る所に活動すれども、遂に不動公共図書館自体の用を弁ずること能わず。」
「今日の急務は郡庁所在地に郡立図書館を設け郡内各町村と各公立学校とに分館を設くるに在り。図書館発展上、我等の今後採るべき方策はこの種の図書館を普及せしむるに在り。農民のために図書館を設け、または都市の図書館を農民のために開放せんとする運動の、従来閑却せられたるは怪しむべし。農村在住者、特に農村の青年は都人士に比し読書の時間を有すること多く、また余の信ずる所によれば優良の文学に趣味を有す。農園の少年、農家の少女は一年を通じて毎週多くの時間を有するのみならず、往々にして全日、全週読書に利用し得べき時間を有す。これら少年男女は都会の悪風に感染せず、自然及び人生の基本的需要と密接するために伝記、歴史、紀行及び通俗科学に趣味を有す。近年発達せる科学的農業の興味増進するに従い耕地、養畜、農産物の販売その他、農園生活の他の活動及び興味を助成すべき農書を渇望する農民漸く多きを加う。道路、電話、新聞紙の普及と政治的及び経済的生活の密接なる接触とは、政治的並社会的問題に関する書籍の需要を喚起せり。今日の農民は最早煽動的政談演説と党派的新聞紙とに満足する者にあらず。」
「郡は図書館及び分館の維持費として郡税を課すべしとの条件の下に、郡立図書館建設のために五万ないし十万円を寄附するは中産者のために、自ら不朽の紀念碑を設くる所以となると同時に、少なからざる公益をなすに好機会なりというべし。」
「この種の美挙は国内所々において、特にオハイオ、カリフォルニヤ二州において先鞭をつけたる者あり。郡立図書館の設立及び維持に関して共同一致の美挙に出でたる先例の一はオハイオ州ヴァン・ワート郡においてこれを見る。同郡々庁所在地の市民にして実業家なるジョン・サンフォード・ブラムバックという人、公共図書館建設のために資金を遺贈しその相続者はこれを十万円に増額せり。市はその中央公園において建設の敷地を提供し、図書館協会はその…