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日記
にっき
副題20 一九三六年(昭和十一年)
20 せんきゅうひゃくさんじゅうろくねん(しょうわじゅういちねん)
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第二十四巻」 新日本出版社
1980(昭和55)年7月20日
入力者柴田卓治
校正者青空文庫(校正支援)
公開 / 更新2017-08-20 / 2017-07-30
長さの目安約 33 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

二月二十六日(水曜)
〔欄外に〕所謂二・二六事件。

三月二十四日(火曜)
 予審終結。
 証人 山清、塚本周三、西隆、窪川イネ等の由。

三月二十七日(金曜)
 ○夜七時近くなってから出所。休憩所で荷物をしらべたりする前になって電燈のフューズがとんでしまって待たされる。
 ○教誨師が来ないで又待ち、来たのを見たら生白いひょこすかな若い者で、黒い服に白足袋、草履、ふところでをしてまるでぞめきのような歩きつきをした男。どうぞ気をつけてやって下さい云々。一旦林町へかえるつもりのところ、真直慶応へ来る約束をしたとのことでこっちへ来てしまった。スエ子大よろこび。部屋をキレイにして待っていてくれる。夜喋って一寸も眠れず。自分眠れぬ条件は持っていないと思っていたがやはり眠れなかった。まだ戒厳中とはびっくり。いろいろ大事をとって出した理由の一半が理解された。

〔欄外に〕国、咲、栄、ベンゴ士、ロクロー[#倉知緑郎]

三月二十八日(土曜)
 咲枝たち国府津へ行った由。
 ○新妻伊都子よりお使。
 ○この病室、南向。窓から土、大きい梅の木、エゾ松等見えて、久しぶりに心持よし。但、省電の音がやかましい、ひどくやかましい。父上もこっち側の二階であった由。
 スエ子出かけて椅子とテーブルを買って来て呉れる。
 テーブル低し、栄さんにあしをたのむ。
〔欄外に〕夜クスリをもらって眠る。

三月二十九日(日曜)
 良。
〔欄外に〕夜薬をもらって眠った。

三月三十日(月曜)
 ひどい風。

三月三十一日(火曜)
 夕方からクニ、ロクが来て皆で青山のお墓りをした。門の棒杭が左方とれて、扉もなし。花もなし。五十日祭をしたから花はないのだということ。スエ子、顔つきをかえて、花を自分で買って来た。いろいろ心持がサクザツしていることが、こういう一つのことを見ても感じられる。クニ、夕飯を病院でたべてゆく。いろいろの用事をたのむ。
 スエ子、小猫のように私のまわりを廻って本も読ませぬ。
 小山、関。関さん、私がもう死ぬかと思った顔つきで入って来た。
 徳。

四月一日(水曜)晴
 安成二郎来。繁治来。安成君も一緒に、繁治さんに待って貰って外苑を三十分ばかり散歩した。かったるし。人間がうるさい。(大体人間がうるさい。)もっと木や草っ原が恋しい。繁治さん、何だか落付かず。四時半頃かえってしまった。やつれている。仕事も経済も困難という感じ。見通しをしっかり立っていない感じ。窪川たちに会えず様子が分らないが、一人一人きりはなすと、あんな風なのかしら皆。作家と劇団の人々のことを比較して考えた。自分が一年の間にためて出来たが、まわりの方は、何だかグダグダしているという感じだ。この食いちがった感じが、即ち情勢に通じぬというわけか。
〔欄外に〕スエ子、私と家をもつことにきめている。

四月二日(木曜)
 ○病院とい…

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