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日記
にっき
作品ID46258
副題28 一九四五年(昭和二十年)
28 せんきゅうひゃくよんじゅうごねん(しょうわにじゅうねん)
著者宮本 百合子
文字遣い新字新仮名
底本 「宮本百合子全集 第二十五巻」 新日本出版社
1981(昭和56)年7月30日
入力者柴田卓治
校正者富田晶子
公開 / 更新2019-08-15 / 2019-07-30
長さの目安約 14 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

一月二日(火曜)
 寿江子と二人。第一信。

一月三日
 小川さんの家へ午後から。坂西という人。「アメリカ発達史」以後一九二九―一九三五以後、ニューディールから今回大戦までの大略の話をきき面白く思った。自分の力で何ものかをなして其を又すっかり失い又つくり直そうとする位の女の据ったところがある。大宜味にしろ。Jさんは、自分の弱さを知らなすぎる。

一月十一日
 ユリ子さーんと二階へ上って来た声は房子なり、まさか、と思う、が、本当だった。いつ来たのさ! いまついたところよ

一月十四日
 馬崎をよんで奥を片づけているところへ菅谷来。人がないとのこと。じゃあ、この人を、と馬崎をやり、早速ワードローヴ・タンスなどもちこんだ。なかなか決断がよくてっとり早い。

一月十五日
 朝から荷を運び、義父も来て手伝っている。夕刻終る。
「もう今夜からこちらでねさせて貰います」
 実にあっさりしている。カレーライスをこしらえて皆でたべる。

一月十八日
 ふさ子が朝九時で立つというので皆で朝飯をたべ、寿送ってゆく。自分巣鴨へゆく時間が中途になったので、やめて、寿の家を見かたがた一緒に鷺の宮へ行く。そして、十二月二十八日以来風呂に入る。三度も四度も出入りしてゆっくり入る。実にいいこころもち、そして夕飯をたべ。九時頃気をもむのに寿いうことをきかず。駒込で下りたらもう市電なし(十時で終り)又日暮里まで。歩いて帰る。

 S千葉の物価と危険とのために東京暮しを思い立って来ている。ぐらぐらしているので菅谷が来ても帰ろうとせず、時々疳が立つ。早く帰ってほしいと。しかし哀れでもあって辛棒する。どうしてそう疳にさわるところのある性質なのか。大成しにくい。大成に必要な一筋さがない。

一月十九日
 巣鴨、

一月二十日
 山崎へ速達
 開成山へ速達
 くすり送ってくれと来る。当分帰らぬつもりとよめた。

一月二十一日
 この数日来夜警報が出ない。大阪、高知、その他へ八十位来てはいるが。不親切ものの親切のようであとのこわいことお話にならず。きょうから一週間月番。
 Jさん、はかったり金をしらべたりすること上手で大助り、自分は相変らずの鳴動だから。千種孝の葬式。親身の心配をする者が一人もいない。ひどい病院寝台車の改造したものに襦袢一つにして白布もかけない棺をのっけて、そこへ定男という海軍の人と嫁の母が同乗(!)して出かけた。わたし丙ばかりよ、と云った娘さんは房と云って、太田という老軍人の妻となって大阪にいる由。
『風車小舎だより』、スガンさんの山羊、法王の騾馬、キュキュニャンの牧師、ゴーシェー神父の保命酒等面白い。ドーデーのこんなものは今よむと、こってりとした丸い露の一しずくのような味がある。
〔欄外に〕
 巣鴨へ
  北方の風
  絹の道
  外蒙共和国
 開成山へ
  タバコ
  太郎の本

九月…

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