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おやゆび姫
おやゆびひめ |
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作品ID | 46318 |
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著者 | アンデルセン ハンス・クリスチャン Ⓦ |
翻訳者 | 大久保 ゆう Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
入力者 | 大久保ゆう |
校正者 | |
公開 / 更新 | 1999-12-29 / 2022-04-21 |
長さの目安 | 約 28 ページ(500字/頁で計算) |
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むかし、一人の女の人がいました。その女の人はかわいい子どもをさずかりたいと思っていました。けれども、願いはいっこうにかないませんでした。心から強く願っても、かないませんでした。日々をすごすうち、ついにいてもたってもいられなくなって、魔法使いのおばあさんのところへ行きました。
女の人は言いました。「かわいい子どもがほしいのです。どうしてもほしいのですが、どうにもならないのです。どうすれば子どもが出来るのですか。」
すると、魔法使いのおばあさんは答えます。「ふぉっ、ふぉ。そんなことはたやすいことよ。ごらんあれ、ここに一つぶの大麦がある。これをそんじょそこらの大麦と思いなさんな。畑にまく麦や、ニワトリに食べさせる麦とは別物じゃ。特別な大麦だよ。これをな、植木ばちの中に植えるのじゃ。すると、何かが起こるはずじゃよ。ふぉっ、ふぉ。」
それを聞いて女の人は、「その大麦をわたしにください。」とたのみました。
「しかし、これは銀貨十二枚ないとわたせんよ。それでもよいのかな?」と、魔法使いのおばあさんがたずねると、女の人はこくりとうなずきました。おばあさんは大麦を女の人の手の中ににぎらせました。
「ありがとうございます。」と、女の人はお礼を言って、魔法使いのおばあさんに銀貨を十二枚わたしました。
女の人は家に急いで帰りました。帰るなりさっそく植木ばちを出してきて、中に麦を植えました。女の人はじっと植木ばちを見つめて、何が起こるか待っていました。
「いったいどうなるのかしら。」と女の人が考えていると、おどろいたことに土の中がもぞもぞ動いていました。
芽が土の中からのびてきたのです。にょきにょきのびて、しだいにはっぱをつけました。まるでチューリップのようでした。それからもどんどん育っていって、あっという間に大きなつぼみをつけました。赤色のつぼみでした。しかし、つぼみができると急に静かになりました。ずっとつぼみは閉じられたままでした。
女の人はその後もじっと見つづけていましたが、なかなか花が咲かないのに気づくと、ため息をつきました。
「それにしても、きれいなお花ね。」と、女の人は言って、赤い花びらにキスをしました。
花びらはきらきら光っていました。女の人がなんどもなんどもキスをすると、ぱっと花が咲きました。本当にチューリップが咲いたのです。でもやっぱり、普通のチューリップでした。
女の人はチューリップを見て首をかしげていると、花の真ん中に人がいることに気がつきました。つやつやした緑色のおしべにかこまれて、とても小さな女の子がかわいらしく座っていたのです。女の子はおやゆび半分の大きさしかありませんでした。あまりにも小さいので、女の子は『おやゆび姫』と呼ばれることになりました。
おやゆび姫は女の人にゆりかごをもらいました。きれいにみがかれたクルミのからの上に、スミレ…