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はだかの王さま
はだかのおうさま
作品ID46319
著者アンデルセン ハンス・クリスチャン
翻訳者大久保 ゆう
文字遣い新字新仮名
入力者大久保ゆう
校正者
公開 / 更新1999-12-29 / 2022-04-21
長さの目安約 12 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 むかしむかし、とある国のある城に王さまが住んでいました。王さまはぴっかぴかの新しい服が大好きで、服を買うことばかりにお金を使っていました。王さまののぞむことといったら、いつもきれいな服を着て、みんなにいいなぁと言われることでした。戦いなんてきらいだし、おしばいだって面白くありません。だって、服を着られればそれでいいんですから。新しい服だったらなおさらです。一時間ごとに服を着がえて、みんなに見せびらかすのでした。ふつう、めしつかいに王さまはどこにいるのですか、と聞くと、「王さまは会議室にいらっしゃいます。」と言うものですが、ここの王さまはちがいます。「王さまは衣装部屋にいらっしゃいます。」と言うのです。
 城のまわりには町が広がっていました。とても大きな町で、いつも活気に満ちていました。世界中のあちこちから知らない人が毎日、おおぜいやって来ます。
 ある日、二人のさぎ師が町にやって来ました。二人は人々に、自分は布織り職人だとウソをつきました。それも世界でいちばんの布が作れると言いはり、人々に信じこませてしまいました。
「とてもきれいな色合いともようをしているのだけれど、この布はとくべつなのです。」とさぎ師は言います。「自分にふさわしくない仕事をしている人と、バカな人にはとうめいで見えない布なのです。」
 その話を聞いた人々はたいそうおどろきました。たいへんなうわさになって、たちまちこのめずらしい布の話は王さまの耳にも入りました。
「そんな布があるのか。わくわくするわい。」と、服が大好きな王さまは思いました。「もしわしがその布でできた服を着れば、けらいの中からやく立たずの人間や、バカな人間が見つけられるだろう。それで服が見えるかしこいものばかり集めれば、この国ももっとにぎやかになるにちがいない。さっそくこの布で服を作らせよう。」
 王さまはお金をたくさん用意し、さぎ師にわたしました。このお金ですぐにでも服を作ってくれ、とたのみました。さぎ師はよろこんで引き受けました。部屋にはた織り機を二台ならべて、すぐに仕事にとりかかりました。でも、はた織り機には何もありませんでした。糸もありません。それでも、さぎ師はいっしょうけんめい布を織っていました。いいえ、ちがうのです。ほんとうは布なんてどこにもなくて、からのはた織り機で織るふりをしているだけなのです。ときどき、材料がなくなったみたいにいちばん値段の高い絹と金でできた糸をください、と王さまに言いました。のぞみどおり材料をもらうと、はた織りには使わず、またからのままで織るふりをしつづけました。夜おそくまではたらいて、がんばっているふりをしました。
 しばらくすると王さまは、ほんとうに仕事がはかどっているのか知りたくなってきました。自分が見に行ってたしかめてもいいのですが、もし布が見えなかったらどうしようと思いました。自分…

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