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太陽系統の滅亡
たいようけいとうのめつぼう
作品ID46458
著者木村 小舟
文字遣い新字新仮名
底本 「懐かしい未来――甦る明治・大正・昭和の未来小説」 中央公論新社
2001(平成13)年6月10日
初出「冒険世界」1907(明治40)5月
入力者川山隆
校正者伊藤時也
公開 / 更新2006-11-30 / 2014-09-18
長さの目安約 15 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

新世界建設同盟会=恐怖時代=死世界は活世界となる=エーテルの利用=地球を運搬す=最後の通告=地球の末期

    上 太陽滅亡の悲惨

 太陽及びその他の惑星は、近き将来に於て滅亡せんとす! との一声は、あたかも響きの物に応ずるがごとく、全世界に向って、電光の速かなるように走り報じたのである、太陽の滅亡! と同時に、全地球上の人類は、我住所の絶滅、我あらゆる者の滅尽を連想して、如何に彼らは、多大の恐怖と、悲嘆とに陥ったであろうか、神経の過敏なる者どもは、この一声の警電を耳にしただけで、すでに生気を絶たれたほどであった。
 宇宙は不可解なり、されど不可解だけに、また如何なる世界があろうやら知れない、宗教上に説く所の、天堂極楽のごときも、あるいは我が太陽系統以外の恒星界を意味するかも知れぬ、坐して滅亡の悲運を目前に眺めんよりは、しかず広大なる宇宙に走って、さらに新世界を築かんには!
 欧米の学者はともに声を一にして絶叫した、乞うまず彼らの語る所をきけ。
「昔、宇宙には極めて多くの火球があった、太陽もその一つであったが、彼らは同じように非常なる速力で回転しておったのである」
 今や新世界建設同盟会の一人は、某天文学者の学説を公衆に紹介すべく、壇上に現われて、かくのごとく演べたのである、ここに於て吾々は、まずこの新世界建設同盟会の現状に就いて記さねばなるまい。
 驚くべき警電に接したる彼らは、すでに黄禍だとか白禍だとかいえる、さる偏狭なる人種上の争奪を棄却して、互に恐るべき太陽系を逸脱して、さらに別天地に子孫の繁栄を図ろうとしたのである。
 所はこれ東西大陸の中心、完全なる天文台は、敢て経費の支出を俟たず、地球上に存在せる、あらゆる材料を搬入して、立所に出来て仕舞った、また同盟会議所のごときは、優に一億万人を収容するに足るべき大殿堂であるが、ここには各国から簡派したる、各階級の議員が、充満しておるのである。
 これらの議員は、いずれも財産を思うもの一人もなく、等しく自己の生命を全うして、未来の安楽を希うものばかりである。
 同盟会の一人は、さらに語を続けて述べていうよう。
「かの高熱度を有する火の玉、すなわち一団の大瓦斯塊は、自ら非常なる速度を有して宇宙の一辺に回転しつつある内、その外側に当ってさらに一大輪を生じたのである」
 この時一人の弁士はこれを反駁して曰く、
「否々、我世界は、由来神の創意に依って出来たのである、瓦斯球が回転しているなどとは真赤な嘘でござる、もし君のいうごとくならば、その瓦斯体なるものは、どういう理由で出来たか、ただ訳もなく出来るはずはござらぬ、何としてもこれは神、即ち造物主の創造に帰するの外はない、如何にというに、神は吾人の想像し得ぬ永劫の昔から在ったものではないか」
 と、これは保守党の弁論で、大分ノーノーと呼ぶ声もあった、すると先の一人…

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