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榛名湖の公魚釣り
はるなこのわかさぎつり |
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作品ID | 46806 |
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著者 | 佐藤 垢石 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「垢石釣り随筆」 つり人ノベルズ、つり人社 1992(平成4)年9月10日 |
初出 | 「釣りの本」改造社、1938(昭和13)年 |
入力者 | 門田裕志 |
校正者 | 仙酔ゑびす |
公開 / 更新 | 2007-07-11 / 2014-09-21 |
長さの目安 | 約 2 ページ(500字/頁で計算) |
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榛名湖の公魚釣りは非常に繁盛である。
十二月中旬から釣れはじめたのであるが、二月一杯は釣れるであろう。例年からみると魚の育ちが大そうよろしく、四寸五分乃至五寸、平均五匁はある。
毎日少ない日でも三、四十人、多い日には七、八十人の釣り手が湖上に右往左往して大した賑わいである。それが極めて初歩の人でも一日に五、六十尾は下らない。名手になると二百尾以上も釣るから、貫目釣りである。
本場といわれる霞ヶ浦から東京市中へ出てくるものは、形の小さい上に渋味が強く、色が黒ずんでいて、上等の食味を持っているとはいえない。
ところが榛名湖の公魚は、丈は長い上にまるまる肥っていて、どうした関係か渋味が少ない。それから体色も若鮎のような光りを持っていて、あの香りこそないが味は若鮎と同じである。
白焼きの橙酢、から揚げ、ふらい、椀種、味噌田楽。何にしてもおいしい。チリ鍋にしようものなら思わず晩酌を過ごす。
十二月の中旬、木枯らしは梢の効用を吹き飛ばした頃は、まだ湖面に氷が張っていないから小舟を水に浮かべて釣ったが、一月に入ると湖はすっかり氷結するから、厚い氷へ、一尺四方くらいの穴をあけて、そこへ鈎を下ろすのである。ブルブルと面白いように釣れる。
榛名富士、相馬山、ヤセオネ、天神峠に囲まれた、広いなだらかな火口原の野の末に、描いたような枯れ林を水際に映した美しい榛名湖で、公魚を釣る気分はまことに愉快である。
しかし氷の穴から釣るよりも、水に舟を浮かべて釣る方が面白い。すべて脈釣りで、ここ独特の仕掛けである。