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懐中時計
かいちゅうどけい |
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作品ID | 46823 |
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著者 | 土原 耕作 Ⓦ / 夢野 久作 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「夢野久作全集7」 三一書房 1970(昭和45)年1月31日 |
初出 | 「九州日報」1923(大正12)年11月4日 |
入力者 | 川山隆 |
校正者 | 土屋隆 |
公開 / 更新 | 2007-08-05 / 2014-09-21 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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懐中時計が箪笥の向う側へ落ちて一人でチクタクと動いておりました。
鼠が見つけて笑いました。
「馬鹿だなあ。誰も見る者はないのに、何だって動いているんだえ」
「人の見ない時でも動いているから、いつ見られても役に立つのさ」
と懐中時計は答えました。
「人の見ない時だけか、又は人が見ている時だけに働いているものはどちらも泥棒だよ」
鼠は恥かしくなってコソコソと逃げて行きました。