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イーリアス
イーリアス
作品ID46996
副題03 イーリアス
03 イーリアス
著者ホーマー
翻訳者土井 晩翠
文字遣い旧字旧仮名
底本 「イーリアス」 冨山房
1940(昭和15)年11月15日
入力者山本寛
校正者小林繁雄
公開 / 更新2010-10-15 / 2014-09-21
長さの目安約 785 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

第一歌
 詩神への祈。 題目の略示。 アポローンの祭司其女クリュセーイスの贖を求めてアガメムノーンに辱めらる。 祭司の祈に依りアポローン疫癘をアカイア陣中に湧かしむ。 豫言者カルハースの説明。 アガメムノーンとアキリュウスとの爭。 アガメムノーン祭司の女を返し、其代償として先にアキリュウスの獲たるブリイセーイスを奪ふ。 アキリュウス怒り、部下を率ゐて水陣に退く。 神母テチス其哀訴を聞き、ヂュウスの救を乞ふことを約す。 クリュセーイスの解放。 神母オリュンポスに登り、ヂュウスに哀訴して聽かる。 ヂュウス約すらく、アキリュウスの屈辱を雪ぐ迄はトロイア軍に戰勝を許すべしと。天妃ヘーレー之を悟りて天王と爭ふ。 ヘープァイストス之を和解せしむ。


*神女よ歌へ、アキリュウス・*ペーレーデース凄じく
燃やせる瞋恚――その果は*アカイア軍におほいなる
禍來たし、勇士らの猛き魂*冥王に
投じ、彼らの屍を野犬野鳥の餌と爲せし
すごき瞋恚を(斯くありてヂュウスの神意滿たされき) 5
*アートレ,デース、民の王、および英武のアキリュウス、
猛けり*爭ひ別れたる日を吟詠の手はじめに。
1 詩神ムーサ(複ムーサイ)
1 ペーレーデースとはペーリュウスの子の意。
2 正しく曰はばアカーイアー。當時はグリースの名稱無し。國民はアカーイオス(複アカーイオイ)又アルゲーオイ又ダナオイとも呼ばる。
3 冥府の王アイデース或はハイデース、いつもペルソーナとして冥府を見る。XXIII244に初めて冥府となす。
6 アートレーデースを縮む。,は省略の記號、以下皆同樣、アートレーデースはアトリュウス(又アートリユウス)の子の意、アトレーデースとも他の詩歌には發音す。ホメーロスの詩に於ては必ずアートレーデース。(Brasse's Greek Gradus)
7 「爭ひ別れたる日」のこのかた「ヂュウスの神意滿たされき」と解する人々あり。

いづれの神ぞ、爭を二雄の間に起せしは?
そはレートーとヂュウスとの*生める子――彼は其祭司
クリュセーイスを恥ぢしめしアートレ,デースにいきどほり、 10
陣に疫癘湧かしめぬ、斯くて衆軍亡び去る。
これより先にクリュセース其の愛娘を救ふべく、
巨多の賠償もたらして、アカイア族の輕舟の
水陣さして訪ひ來り、手に黄金の笏の上、
神アポローンの「*スチンマ」を掛けてアカイア衆人に、 15
願へり、特に元帥のアートレ,デース兄弟に。
9 アポルローン。此譯に於てはアポルローンをアポローンに縮む。
15 幣帛の類。

『アートレ,デース及び他の脛甲堅きアカイオイ、
*ウーリュンポスの高きより、神靈願はく敵王の
都城の破壞と安らかの歸國を君に惠めかし。
君は愛女を身に返し、その贖を受け納れよ、 20
銀弓鳴らすアポローン――ヂュウスの御子惶みて』
18 ウーリュンポス或はオリュム…

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