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昔の盲人と外国の盲人
むかしのもうじんとがいこくのもうじん
作品ID47117
著者宮城 道雄
文字遣い新字新仮名
底本 「心の調べ」 河出書房新社
2006(平成18)年8月30日
初出「雨の念仏」1935(昭和10)年2月18日
入力者貝波明美
校正者noriko saito
公開 / 更新2008-01-30 / 2014-09-21
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より




 昔は盲人に特別の位を与えたものである。よく何市、何市とあるが、あれも市名といって、盲人の位の一つで、一番下である。しかし何といっても一番よいのは[#挿絵][#挿絵]であって、昔は[#挿絵][#挿絵]になるには千両の金を納めなければならなかった。その代り十万石の大名に相当する資格が与えられていた。その次は勾当で、これは[#挿絵][#挿絵]の半分位の資格であった。
 昔春先きに小大名が京都に上ると、[#挿絵][#挿絵]の性の悪いのが、丁度蜘蛛が網を張って虫のひっかかるのを待っているように、 伏見街道に[#挿絵][#挿絵]の幕を張り廻らしておく。すると小大名はそこを通る時に、駕籠から降りなければならないので、家来が殿様の行列より先きに来て、何々がここを通るから、お駕籠のままで通らして戴きたいといって、金一封を持って頼みに行く。
 平生は大して懐工合がいいわけではないが、春先きになると、大勢の人を雇ってそんな悪戯をしていたものだそうであった。
 江戸あたりでは、[#挿絵][#挿絵]は金貸のようなことをしていたそうである。それは盲人保護の意味で、[#挿絵][#挿絵]の貸した金は白洲に出ても、必ず取れることになっていたからだそうである。またそこを狙って普通の金貸が[#挿絵][#挿絵]に金を廻して、[#挿絵][#挿絵]から又貸をしたのだそうであった。
 幕府の頃は日本では盲人の保護が非常に行き届いていて、音楽家の外に、針医にも位がついていた。同じ頃の西洋の盲人の話を聞くと、あちらでは盲人は乞食より外になかったそうである。
 或る国などは、盲人を全然人間扱いにしなかった。そして、竹の垣を作って、その中に盲人と豚とを一緒に入れて、盲人に豚を捕えさせて、困っているのを目明きが見て喜んでいたという話があるが、それに比較すると、日本の盲人は幸福であったわけである。
 今日では外国でも盲人に対して、保護を与えるようになり、中には大学を出た者もあるそうである。或る国などでは、盲人が四辻を通る時に、黄色の旗を持っていると、自動車でも何でも避けて行くそうである。また独逸あたりでは、盲人が犬を連れて歩くそうで、つまり犬が道案内を勤めるわけである。



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