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売られていった靴
うられていったくつ |
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作品ID | 4722 |
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著者 | 新美 南吉 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「ごんぎつね 新美南吉童話作品集1」 てのり文庫、大日本図書 1988(昭和63)年7月8日 |
入力者 | めいこ |
校正者 | もりみつじゅんじ、鈴木厚司 |
公開 / 更新 | 2003-11-05 / 2014-09-18 |
長さの目安 | 約 2 ページ(500字/頁で計算) |
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靴屋のこぞう、兵助が、はじめていっそくの靴をつくりました。
するとひとりの旅人がやってきて、その靴を買いました。
兵助は、じぶんのつくった靴がはじめて売れたので、うれしくてうれしくてたまりません。
「もしもし、この靴ずみとブラシをあげますから、その靴をだいじにして、かあいがってやってください。」
と、兵助はいいました。
旅人は、めずらしいことをいうこぞうだ、とかんしんしていきました。
しばらくすると兵助は、つかつかと旅人のあとを追っかけていきました。
「もしもし、その靴のうらの釘がぬけたら、この釘をそこにうってください。」
といって、釘をポケットから出してやりました。
しばらくすると、また兵助は、おもいだしたように、旅人のあとを追っかけていきました。
「もしもし、その靴、だいじにはいてやってください。」
旅人はとうとうおこりだしてしまいました。
「うるさいこぞうだね、この靴をどんなふうにはこうとわたしのかってだ。」
兵助は、
「ごめんなさい。」
とあやまりました。
そして、旅人のすがたがみえなくなるまで、じっとみおくっていました。
兵助は、あの靴がいつまでもかあいがられてくれればよい、とおもいました。