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天狗外伝 斬られの仙太
てんぐがいでん きられのせんた
作品ID47647
著者三好 十郎
文字遣い新字新仮名
底本 「天狗外伝 斬られの仙太」 而立書房
1988(昭和63)年2月10日
入力者門田裕志
校正者伊藤時也
公開 / 更新2010-11-01 / 2014-09-21
長さの目安約 249 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

■登場人物
真壁村の仙太郎
その兄仙右衛門
     段六
加多源次郎
兵藤治之
利根の甚伍左
その娘お妙
くらやみの長五郎
芸者お蔦
真壁村の女房/百姓たち
植木村の子供たち/お咲/吉坊/その他
植木村の女たち
暴徒六人
下妻の瀧次郎
その息子瀧三
天狗党の今井/早田/井上/水木/その他
男一、二
士一、二
吉村軍之進
鳥追
行商人
馬方
検分の刑吏
代官所役人/手先
上林の弥造
北条の喜平/子分
佐貫の半助/子分
町方の手先
博徒喜造/甲乙
茶店の爺
番太
読売り
人足四人
村の男一、二
刑事/巡査
自由党の壮士三人
百姓甲乙
平松の旦那/その他
[#改ページ]

1 下妻街道追分土手上

右手遠くに見える筑波山。土手の向う側(舞台奥)は小貝川の河原添いの低地になっていて、その左手寄りに仕置場が設けてあるらしく荒組の青竹矢来の上部の一部が見られる。街道かその方へダラダラ下りの小道の角に、ギョッとするほどに大きい高札。
高札のすぐ傍の路上にベタリと土下座をしてしきりに額を砂利にすりつけて辞儀をしている若い百姓真壁の仙太郎。その前の地面にはタトウ紙の上に白い奉書紙と筆硯がのせてある。側に同様、土下座をして一緒に辞儀をしたりハラハラしつつ仙太郎の様子を見ている百姓段六。
高札と二人を遠巻きにして黙って円陣を作って立っている五、六人の百姓。他に通りがかりの行商人、馬方、鳥追の女など。中の二、三人の百姓は仙太郎の方を見て居れないで、うなだれ切っている。オドオドと仕置場の方を振向いて見下ろす者、何か言おうとして言えず手足をブルブルふるわせている者。百姓の一人は仙太郎に向ってしゃがんでしまい、あやまるように辞儀をしている。行商人がよく読めぬ高札を読もうとして口の中で唸っている。

仙太 お願えでごぜます。皆様、どうぞ、御願えでごぜます。へい、お願えで……(辞儀をしつづける)
段六 皆さん、この俺からもおたの申すで。あんでもねえことで。所とお名前と爪判をいただきせえすれば、そいでこの男の兄きが助かりますで……(一同は顔を見合せて答えぬ)
仙太 たんだそれだけでごぜます。へい。皆様に御迷惑をおかけするようなことは金輪際、きゆうり切ってありませんでええす。へい……。
段六 ……(群集と仙太を何度も見較べて頭を振り)……仙太公、どうもはあ、しようあんめ。もうこうなれば手遅れだべよ。あきらめな、仙太公。よ、おい仙太公。
仙太 (段六の言葉は耳に入らぬ)お願え申します。
行商人 ……ええと、右の者共、上を恐れず、ええと、貢租の件に就き……へえ、貢租てえと年貢のことじゃろが……強訴に及ばんと致し相謀り……強訴というのは何のことだえ?
百姓一 ごうそかね、はあて? とんかく、あんでもはあ差し越し願えばしようとなさったてえがな。
行商人 ははん、この平七とか徳兵衛とか仙右衛門やらがね?…

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