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海島冒険奇譚 海底軍艦
かいとうぼうけんきたん かいていぐんかん
作品ID48216
副題03 序
03 じょ
著者肝付 兼行
文字遣い旧字旧仮名
底本 「海島冒険奇譚 海底軍艦」 名著復刻日本児童文学館、ほるぷ出版
1975(昭和50)年10月
初出「海島冐險奇譚 海底軍艦」1900(明治33)年11月15日
入力者川山隆
校正者土屋隆
公開 / 更新2009-10-16 / 2014-09-21
長さの目安約 4 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

夫れ海は地表百分の七十三を占め、以て吾人の棲息する陸土を包圍す。故に人類とし又國民として世界に雄飛せんとする者は、必す先つ此包圍を破りて激浪怒濤の間に縱横奔馳するの元氣無かる可らす。英國何者そ、獨逸何者そ、佛國何者そ、露國米國何者そ、苟も雄を宇内に爭ふ者は、一として此元氣の勃興發動底止する所を知らさるに非すや。清國何者そ、韓國何者そ、土國何者そ、西國葡國何者そ、徒に廣大なる土地衆多なる人民を有するも、元氣銷沈して常に人後に瞠若たるに非すや。均く是一國なり、而して盛衰の顯著なる彼の如し。是豈故なしとせむや。語に曰ふ、天に順ふ者は盛り、天に逆ふ者は衰ふと。前者の以て盛なる所の者は、天に順へはなり。後者の以て衰ふる所の者は、天に逆へはなり。夫れ我か海國民たる者は、抑前者たらむことを欲する乎、將た後者乎、固より智者を待て後知らさるなり。
大瀛の水沌々渾々、其勢滔天の如きも、其源を繹ぬれは、潺々たる山間小流の湊合に非すや。葱嶺の山巍然として雲表に聳え、將に天を摩せむとするの慨あるも、其源を究むれは、微々たる路上細塵の集積に非すや。夫の強國の以て雄大を致す所のものも、亦其源を推せは、總角丱たり、紅鬟燦たる、可憐の兒女教育の發展に因するや、幾多の事實之を證して餘りあるに非すや。而して其然る所以のものは何そや、皆克く天に順ふの結果たらさるはなし。然らは則ち、天下の大計知るへきのみ。雄を宇内に稱せむと欲せは、國を擧けて大に女兒教育の法を講し、以て其元氣の本源を開發するに若くはなきなり。今や我邦の教育は、駸々其歩武進むか如しと雖。仔細に其状を察すれは、實に寒心に堪へさるものあり。請ふ内外の實例を擧けて之を證せむ。
回顧すれは今を距る十五年前 我か軍艦筑波の遠く新西蘭に航し、其澳克蘭港を解纜するの前日、艦長は滯港中其市民より受けたる懇迎を謝し、併せて別を告けむか爲め、一士官に命し風波を衝きて一艇を陸に特派せしめたり。而して其艇の、或は波頭に上り、或は浪底に下り、殆と半程を進むや、之と相反して、一艇の帆を張り浪を破つて、本艦に向ひ快走し來たる者あり、艦員皆怪み衆眸之に注く。須臾にして本艦に達し、其乘員の舷門に上り來たるを見れは、何そ圖らむ、※[#「過」の「咼」に代えて「咼の左右対称」、3-10]る數日、我か艦員の接待に、懇篤周旋の勞を取りし、妙齡の貴夫人令孃にして、總員八名一人の男子を混へす、我か明日の解纜を新紙に知り、來りて惜別の意を表せむか爲めならむとは。其風姿の美にして擧止の健なる、梅花積雪を凌くの慨あり。其公誼に厚く友愛に深き、以て四海兄弟の情を表するに足る。此の如くにして始めて大國民の母たり配たるに耻ちすと謂ふへし。
之に反して、昨初夏、我か海軍に於て主計官を學士に募るの擧あり。某法學博士、之か斡旋の勞をとりて、漸く五人の志願者を得たり、然るに怪むへし、數日ならすして此五…

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