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総説 西洋音楽史の時代
そうせつ せいようおんがくしのじだい
作品ID48228
著者乙骨 三郎
文字遣い新字新仮名
底本 「西洋音楽史(上巻)」 音楽文庫、音楽之友社
1955(昭和30)年3月28日
入力者蒋龍
校正者hitsuji
公開 / 更新2019-09-19 / 2019-08-30
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 西洋音楽発達の経路を明らかにするにはそれを幾つかの時代に区分しなければならないが、それには主として音楽そのものの進歩の順序を考え、併せて一般史や他の芸術史(殊に文学史)との関係も参酌するのがよい。我々はそれらの点を考慮した上で音楽史を次の諸時代にわける。
(一)古代――キリスト教発生以前の諸国の音楽の栄えた時代で、音楽の様式からいえば単音の連続よりなる旋律のみが行われた時である。この単音時代になされた重要な事は種々の音階や旋律の作られたことである。
(二)中世――キリスト教の単音聖歌の起った時からローマ教会の重音聖歌の完成された時(即ちパレストリーナが世を去った頃)までを含む。この時代は更に次の二期にわけられる。
 (イ)単音期――一世紀から九世紀を含む。古代の音楽(ユダヤ及びギリシャのもの)に基いて新しい聖歌の旋律が作り出された時期である。
 (ロ)重音期――十世紀から十六世紀までを含む。単音期に作られた聖歌の旋律に、他の異る旋律を合せて歌うことが始まり、それが遂に複雑な重音楽に発達した時期である。その頃の重音は「対位」式又は「多声」式といって、二つ以上の独立の旋律を同時に結合する種類のものである。
(三)近代――十七世紀から現在までを含む。「対位」式の代りに「和声」式、又は「単声」式と呼ぶ重音の盛んになった時代である。和声式というのは重音の声がそれぞれ独立の旋律として進むのでなく、その中の一つ(殊に高音)が旋律として扱われ、その他の声はこの旋律に随伴してそれを助ける役をするもので、重音とはいえ幾分古代の単音式の単純さをも備えたものである。和声式は対位式と対立する様式であるが、それと無関係に突発したものではない。対位式が発展して行く間にそれが次第に単純化されて、その結果自然に生み出されたものであって、十七世紀以後はそれが盛んになったのである。但し和声式が盛んになったからと云って以前の対位式が絶滅したのではない。対位式はその後も古きをとうとぶ作家によって継続され、殊に十八世紀の前半(バッハ、ヘンデルの時代)には再び優勢を占め、また最近の音楽に於ても流行の傾向を示している。然し大体に就いて云うと、近代は和声式重音の行われた時代といってよい。なお近代の三百三十年間は更に次の四期にわけられる。
  (イ)通奏低音期――十七世紀の初めから十八世紀の中頃(即ちバッハ、ヘンデルが仕事を終えた頃まで)約一五〇年間を含む。すべての近代音楽の基礎が築かれた時期である。これを通奏低音期と呼んだのは通奏低音(一名数字附低音)と云う略譜を見て即席に和音的伴奏をつける事が行われた時代だからで、この命名はリーマンに従ったものである。
  (ロ)古典期――後世の模範と仰がれる音楽の作られた時期である。十八世紀の中頃から十九世紀の最初の四半期(即ちベートーヴェンが仕事を終った頃)まで約七…

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