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小桜姫物語
こざくらひめものがたり |
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作品ID | 4823 |
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副題 | 03 小桜姫物語 03 こざくらひめものがたり |
著者 | 浅野 和三郎 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「霊界通信 小桜姫物語」 潮文社 1985(昭和60)年7月31日 |
入力者 | 浅野和三郎・著作保存会 |
校正者 | POKEPEEK2011 |
公開 / 更新 | 2012-10-09 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 281 ページ(500字/頁で計算) |
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舌代
本物語は謂わば家庭的に行われたる霊界通信の一にして、そこには些の誇張も夾雑物もないものである。が、其の性質上記の如きところより、之を発表せんとするに当りては、亡弟も可なり慎重な態度を採り。霊告による祠の所在地、並に其の修行場などを実地に踏査する等、いよいよ其の架空的にあらざる事を確かめたる後、始めて之を雑誌に掲載せるものである。
霊界通信なるものは、純真なる媒者の犠牲的行為によってのみ信を措くに足るものが得らるるのであって、媒者が家庭的であるか否かには、大なる関係がなさそうである。否、家庭的なものの方が寧ろ不純物の夾雑する憂なく、却って委曲を尽し得べしとさえ考えらるるのである。
それは兎に角として、また内容価値の如何も之を別として、亡弟が心を籠めて遣せる一産物たるには相違ないのである。今や製本成り、紀念として之を座右に謹呈するに当たり、この由来の一端を記すこと爾り。
昭和十二年三月
淺野正恭
[#改ページ]
序
霊界通信――即ち霊媒の口を通じ或は手を通じて霊界居住者が現界の我々に寄せる通信、例を挙ぐれば Gerldine Cummins の Beyond Human Personality は所謂「自動書記」の所産である。此書中に含まるる論文は故フレデリク・マイヤーズ――詩人として令名があるが、特に心霊科学に多大の努力貢献をした人――が霊界よりカムミンスの手を仮りて書いたものと信ずる旨をオリバ・ロッヂ卿、ローレンス・ヂョンス卿が証言した。(昨年十二月十八日の[#挿絵]The Two Words[#挿絵]所掲)
カムミンスの他の自動書記は是迄四五種ある。其文体は各々相違して居る。又彼の自著小説があるが、是は全く右数種の自動書記と相違している。心霊科学に何等の実験がなく、潜在意識の所産などなどと説く懐疑者の迷を醒ますに足ると思う。
小櫻姫物語は解説によれば鎌倉時代の一女性がT夫人の口を借り数年に亘って話たるものを淺野和三郎先生が筆記したのである。但し『T夫人の意識は奥の方に微かに残っている』から私の愚見に因れば多少の Fiction は或はあり得ぬとは保障し難い。
しかしこれらを斟酌しても本書は日本に於いては破天荒の著書である。是を完成し終った後、先生は二月一日突然発病し僅々三十五時間で逝いた。二十余年に亘り、斯学の為めに心血を灑ぎ、あまりの奮闘に精力を竭尽して斃れた先生は斯学における最大の偉勲者であることは曰う迄もない。
私は昨年三月二十二日、先生と先生の令兄淺野正恭中将と岡田熊次郎氏とにお伴して駿河台の主婦の友社来賓室に於て九條武子夫人と語る霊界の座談会に列した。主婦の友五月号に其の筆記が載せられた。
日本でこの方面の研究は日がまだ浅い、この研究に従事した福来友吉博士が無知の東京帝大理学部の排斥により同大学を追われたのは二十余年…