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雑信(一)
ざっしん(いち)
作品ID48244
著者種田 山頭火
文字遣い新字新仮名
底本 「山頭火随筆集」 講談社文芸文庫、講談社
2002(平成14)年7月10日
初出「椋鳥会五句集『河豚』」1912(明治45)年1月
入力者門田裕志
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2008-07-15 / 2014-09-21
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)

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本文より




 新年句会には失敬しました、あれほど堅く約束していた事ですから、私自身は必ず出席するつもりでしたけれど、好事魔多しとやらで、飛んでもない邪魔が這入って、ああいうぐうたらを仕出来しました、何とも彼とも言訳の申上様もありません、ただただ恐縮の外ありません、新年早[#挿絵]ぐうたらの発揮なんぞは自分で自分に愛想が尽きます、といったところで、ぐうたらは何処まで行ってもぐうたら、何時になってもぐうたらで、それは私の皮膚の色が黒いのとおなじく、私の性であります、私自身さえ何うする事も出来ません、有体に白状しますれば私は我と我が身を持ち倦んでいるのです、丁度、気の弱い母親が駄々ッ児の独り息子を持て余していますように、
我に小さう籠るに耳は眼はなくも
   泥田の田螺幸もあるらむ
 突然ですが、少しく事情があって当分の間、俳句、単に俳句のみならず一切の文芸に遠ざかりたいと思います、随って名残惜しくも、皆様と袖を分たねばなりません、今年は子の年ですから、仁木の鼠みたいに、また出直して来るつもりではありますが、一応お別れします、色々御厄介になりました、皆様、御機嫌よう。
毒ありて活く生命にや河豚汁
        一月十八日午前十時
             田螺公 謹んで申す
(椋鳥会五句集『河豚』明治四十五年一月)



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