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述懐
じゅっかい |
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作品ID | 48248 |
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著者 | 種田 山頭火 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「山頭火随筆集」 講談社文芸文庫、講談社 2002(平成14)年7月10日 |
初出 | 「広島逓友」1938(昭和13)年8月 |
入力者 | 門田裕志 |
校正者 | 仙酔ゑびす |
公開 / 更新 | 2008-07-15 / 2014-09-21 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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――私はその日その日の生活にも困っている。食うや食わずで昨日今日を送り迎えている。多分明日も――いや、死ぬるまではそうだろう。だが私は毎日毎夜句を作っている。飲み食いしないでも句を作ることは怠らない。いいかえると腹は空いていても句は出来るのである。水の流れるように句心は湧いて溢れるのだ。私にあっては生きるとは句作することである。句作即生活だ。
私の念願は二つ。ただ二つある。ほんとうの自分の句を作りあげることがその一つ。そして他の一つはころり往生である。病んでも長く苦しまないで、あれこれと厄介をかけないで、めでたい死を遂げたいのである。――私は心臓麻痺か脳溢血で無造作に往生すると信じている。
――私はいつ死んでもよい。いつ死んでも悔いない心がまえを持ちつづけている。――残念なことにはそれに対する用意が整うていないけれど。――
――無能無才。小心にして放縦。怠慢にして正直。あらゆる矛盾を蔵している私は恥ずかしいけれど、こうなるより外なかったのであろう。
意志の弱さ、貪の強さ――ああこれが私の致命傷だ!
(「広島逓友」昭和十三年八月)