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グレイト・ギャツビー
グレイト・ギャツビー |
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作品ID | 4831 |
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原題 | THE GREAT GATSBY |
著者 | フィッツジェラルド フランシス・スコット Ⓦ |
翻訳者 | 枯葉 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
入力者 | |
校正者 | |
公開 / 更新 | 2002-10-15 / 2014-09-17 |
長さの目安 | 約 299 ページ(500字/頁で計算) |
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今一度、ゼルダへ
Then wear the gold hat, if that will move her; If you can bounce high, bounce for her too, Till she cry 'Lover, gold-hatted , high-bouncing lover, I must have you!'
金の帽子をかぶるんだ それがあの娘に効くのなら もしも高く跳べるなら ついでに高く跳んでやれ やがてあの娘が叫ぶまで 「金色帽子も ハイジャンプも すてき あなたを絶対モノにしなくちゃね!」
トーマス・パーク・ダンヴィリエ
第1章
ぼくが今より若くて今より傷つきやすかった時代に父から受けた一種の忠告を、ぼくは何度も心の中で繰りかえしながら生きてきた。
「他人のことをとやかく言いたくなったときはいつでもね、この世の誰もがおまえほどに恵まれた生き方をしてるわけじゃないと思い出すことだ」
父はそれ以上何も言わなかったものの、ぼくと父とは、他人行儀なやりかたで異常なほど意思を伝え合ってきたから、父はこの言葉にもっと大きな意味を含めているのがよく分かった。結果として、ぼくはどんなときでも判断を保留したがるくせがつき、そのおかげで一風変わった連中の気持ちも理解できたし、また、退屈きわまりない連中が2、3人と言わずぼくにつきまとったりしたのも、このくせのせいだろう。人並外れた精神は、人並みの人物がこの心がけを見せると、たちまちそれを察知し、誼(よしみ)を通じようとするものなのだ。それで大学では、あいつは策士だなんて不当な非難を浴びたりもした。というのもぼくは、よく知りもしない乱暴者たちが胸に抱えこんだ苦悩を知っていたりしたからだ。ぼくはそうした信頼を求めて得たわけではない。よく、寝たふりをしたり、考え事をしているふりをしてみせたり、嫌がらせに走ったりして、相手を遠ざけようとしたのだ――ぼくと親しくつきあいたがっている気配が伺えたときは。それは勘違いのしようがない気配といえた。なぜなら、若者同士の親睦(しんぼく)というものは――というか、少なくともそういう親睦において用いられる言葉には――たいていオリジナリティーが欠けていて、本心を隠そうとしているのが見え見えの出来の悪い代物(しろもの)になっているからだ。判断の保留は無限の希望を生む。父がえらそうに言い出したように、そしてぼくがえらそうに繰りかえすように、常識非常識の感覚は生まれながらに十人十色(じゅうにんといろ)なのであって、これを忘れてしまうようでは、ぼくもまた何事かを見落としてしまうのではないだろうか。
それで、ぼくはこうして自分の心の広さを誇っておきながら、それにも限度があるということを認めることになる。人の一挙一動は、岩のようにがっしりしたと…