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竹取物語
たけとりものがたり
作品ID48310
著者和田 万吉
文字遣い旧字旧仮名
底本 「竹取物語・今昔物語・謠曲物語」 復刻版日本兒童文庫、名著普及会
1981(昭和56)年8月20日
入力者しだひろし
校正者noriko saito
公開 / 更新2011-05-08 / 2014-09-16
長さの目安約 15 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 むかし、いつの頃でありましたか、竹取りの翁といふ人がありました。ほんとうの名は讃岐の造麻呂といふのでしたが、毎日のように野山の竹藪にはひつて、竹を切り取つて、いろ/\の物を造り、それを商ふことにしてゐましたので、俗に竹取りの翁といふ名で通つてゐました。ある日、いつものように竹藪に入り込んで見ますと、一本妙に光る竹の幹がありました。不思議に思つて近寄つて、そっと切つて見ると、その切つた筒の中に高さ三寸ばかりの美しい女の子がゐました。いつも見慣れてゐる藪の竹の中にゐる人ですから、きっと、天が我が子として與へてくれたものであらうと考へて、その子を手の上に載せて持ち歸り、妻のお婆さんに渡して、よく育てるようにいひつけました。お婆さんもこの子の大そう美しいのを喜んで、籠の中に入れて大切に育てました。
 このことがあつてからも、翁はやはり竹を取つて、その日/\を送つてゐましたが、奇妙なことには、多くの竹を切るうちに節と節との間に、黄金がはひつてゐる竹を見つけることが度々ありました。それで翁の家は次第に裕福になりました。
 ところで、竹の中から出た子は、育て方がよかつたと見えて、ずん/\大きくなつて、三月ばかりたつうちに一人前の人になりました。そこで少女にふさはしい髮飾りや衣裳をさせましたが、大事の子ですから、家の奧にかこつて外へは少しも出さずに、いよ/\心を入れて養ひました。大きくなるにしたがつて少女の顏かたちはます/\麗しくなり、とてもこの世界にないくらゐなばかりか、家の中が隅から隅まで光り輝きました。翁にはこの子を見るのが何よりの藥で、また何よりの慰みでした。その間に相變らず竹を取つては、黄金を手に入れましたので、遂には大した身代になつて、家屋敷も大きく構へ、召し使ひなどもたくさん置いて、世間からも敬はれるようになりました。さて、これまでつい少女の名をつけることを忘れてゐましたが、もう大きくなつて名のないのも變だと氣づいて、いゝ名づけ親を頼んで名をつけて貰ひました。その名は嫋竹の赫映姫といふのでした。その頃の習慣にしたがつて、三日の間、大宴會を開いて、近所の人たちや、その他、多くの男女をよんで祝ひました。
 この美しい少女の評判が高くなつたので、世間の男たちは妻に貰ひたい、又見るだけでも見ておきたいと思つて、家の近くに來て、すき間のようなところから覗かうとしましたが、どうしても姿を見ることが出來ません。せめて家の人に逢つて、ものをいはうとしても、それさへ取り合つてくれぬ始末で、人々はいよ/\氣を揉んで騷ぐのでした。そのうちで、夜も晝もぶっ通しに家の側を離れずに、どうにかして赫映姫に逢つて志を見せようと思ふ熱心家が五人ありました。みな位の高い身分の尊い方で、一人は石造皇子、一人は車持皇子、一人は右大臣阿倍御主人、一人は大納言大伴御行、一人は中納言石上麻呂でありました…

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