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桜さく島
さくらさくしま |
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作品ID | 4839 |
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副題 | 春のかはたれ はるのかはたれ |
著者 | 竹久 夢二 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「桜咲く島 春のかはたれ」 洛陽堂 1912(明治45)年2月24日 |
入力者 | 土屋隆 |
校正者 | 田中敬三 |
公開 / 更新 | 2005-09-12 / 2014-09-18 |
長さの目安 | 約 4 ページ(500字/頁で計算) |
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[#ここから手書き文字]
暮れゆく春のかなしさは
歌ふをきけや爪弾の
「おもひきれとは死ねとの謎か
死ぬりや野山の土となる」
[#ここで手書き文字終わり]
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隅田川
「春信」の
女の髪をすべりたる
黄楊の小櫛か
月の影。
「どうせ売られる身ぢやほどに
静かに漕やれ 勘太殿」
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人買
秋の日は
赤い蜻蛉のかはたれに
塀の蔭から青頭巾。
やれ人買ぢや、人買ぢや
何処へ迯げようぞ、隠れようぞ。
赤い蜻蛉が飛びまわる。
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御籤
思ひあまりて御籤を引けば
なんとせうぞの凶と出る。
いつそ打明け話さうか
ひとりで泣いて済さうか。
えヽなんとせう川柳。
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雀の子
トコ ドンドコ ピイ ヒヤラヒヤア
麦の上をば風が吹く。
役者の群にはぐれたる
子供心のはかなさは
……うちの浦のちさの木に
雀が三羽とうまつて
一羽の雀がいふことにや
ゆふべ御座つた花嫁御
何が悲しゆてお泣きやるぞ
お泣きやるぞ………………
今のわが身につまされて
ほろりほろりと泣いてゆく。
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白い薬
黄な袋のセメンエン
熱ある舌にしみる時。
暗い空から雪が降る。
炬燵の上の黒猫の
青い瞳の光る時。
柩の屋根へ雨が降る。
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街の五月
……チン ツン くどけば なぁびく
チツツン ツントン 相生の松……
口三味線の足拍子
空気草履の柔かさ。
肩のうへでは花色の
日傘がまわる絵がまわる。
……またいついつもの約束の チンツン
日をまつ 時まつ 暮をまあつ……
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越後の山
角兵衛獅子の悲しさは
親が太鼓打ちや、子が踊る。
股の下から峠を見れば
もしや越後の山かと思ひ
泣いてたもれなとも/″\に。
角兵衛獅子の身の辛さ
輪廻はめぐる小車の
蜻蛉がへりの日も暮れて
旅籠をとるにも銭はなし
逢の土山雨が降る。
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夏のかはたれ
一や
二や
お駒さん。
煙草の けむりは
丈八つあん…………
とん/\とんとつく手鞠。
白い指からはなれて見れど
未練が残るといつたよに
やるせないよに往来する。
ゆら/\ゆれる伊達帯から
江戸紫の日が暮れる。
三や
四や
夕霧さん………
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夢
春の夜の、夢の一つはかくなりき。
丹塗の欄の長廊に
散りくる花を舞扇
うけて笑みたる「歌麿の
女」の青き眉を見き。
冬の夜の、夢一つはかくなりき。
黒き頭巾を被りたる
人買の背に泣いじやくり
山の岬をまわる時、
「廣重の海」ちらと見き。
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雪の降る日
雪の降る日は、駒鳥[#ルビの「こまどり」は底本では「こま り」]の
紅い胸毛のおど/\と
風に吹かれるやるせなさ。
雪の降る日に、小雀は
赤い木の実が食べたさに…