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すずめ
作品ID48469
著者原 民喜
文字遣い新字旧仮名
底本 「普及版 原民喜全集第一巻」 芳賀書店
1966(昭和41)年2月15日
入力者蒋龍
校正者伊藤時也
公開 / 更新2013-04-20 / 2014-09-16
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 酔ぱらって雀を憶ひ出した二人は新宿まで出掛けた。屋台店の皿に赤裸のままの奴がころがってゐて、若い娘が庖丁で骨を叩いてゐた。一人は一羽の頭を噛ったばかりでもう食はなかった。一人は一串と、頭の欠けたもう一串を平げた。
 頭を食ったばかりの男は、その後食ひ足らなかったことを残念がって改めて食ひに行った。「あの時は酔ぱらってゐて、赤身のままの奴を見たので、つい変な気持がしたのだ。」と、その男は云ってゐた。

 食べものの話が出た時、一人が鼠はおいしいと頻りに云ふので、鼠が食へるかねと相手が問ひ返すと、いや雀の間違ひだと笑った。
 ある女が信仰の話から輪廻思想まで説き出すと、二人の男は遽かにはしゃぎ出した。
「死んだら君は雀になり給へ。」
「いや、願はくば君と一串にされて焼かれたいものだね。」

 あいつも死んだら他の奴と一串にさされるのか――身体の調子が少し悪くて、新宿では雀を憐まなかった方の男が、窓から外を見てゐると、檜葉の樹に雀がゐた。



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