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踏査
とうさ |
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作品ID | 48729 |
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著者 | 田山 花袋 Ⓦ / 田山 録弥 Ⓦ |
文字遣い | 旧字旧仮名 |
底本 |
「定本 花袋全集 第十五巻」 臨川書店 1994(平成6)年6月10日 |
入力者 | 特定非営利活動法人はるかぜ |
校正者 | きゅうり |
公開 / 更新 | 2020-03-10 / 2020-02-21 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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街道がある。其處に日が照る。人が通つて居る。向うには山の翠が見える。それは年々歳々同じである。秋が來れば稻が熟つて、里川に澄んだ水に雜魚の泳ぐのが鮮かに見える。稻を滿載した車がガラガラと音を立てゝ通つて行く。私は其處に一『田舍教師』の歩いて行く姿を明かに見得た。
踏査――私はこの踏査といふことを地理學から學んだ。
日記よりも手紙、手紙よりも踏査の肝要なのを私は感じた。
歴史地理といふ學問は面白い學問である。私は小説地理といふことを『田舍教師』に由つて考へた。
私が小説製作上實在を尊ぶのは、決して消極的ではない、積極的である。史家が古城址をさぐり、地理學者が山嶽を踏査するのと同じ位に思つてゐる。