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其中日記
ごちゅうにっき
作品ID49148
副題08 (八)
08 (はち)
著者種田 山頭火
文字遣い新字旧仮名
底本 「山頭火全集 第七巻」 春陽堂書店
1987(昭和62)年5月25日
「山頭火全集 第六巻」 春陽堂書店
1987(昭和62)年1月25日
入力者小林繁雄
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2009-10-19 / 2014-09-21
長さの目安約 149 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

唐土の山の彼方にたつ雲は
  ここに焚く火の煙なりけり


 一月一日

・雑草霽れてきた今日はお正月
・草へ元旦の馬を放していつた
・霽れて元日の水がたたへていつぱい
 けふは休業の犬が寝そべつてゐる元日
・椿おちてゐるあほげば咲いてゐる
・元日の藪椿ぽつちり赤く
・藪からひよいと日の丸をかかげてお正月
・お宮の梅のいちはやく咲いて一月一日
・空地があつて日が照つて正月のあそび
   湯田温泉
・お正月のあつい湯があふれます
   年頭所感
・噛みしめる五十四年の餅である
   ぐうたら手記 覚書
□底光り、人間は作品は底光りするやうにならなければ駄目だ、拭きこまれたる、磨きあげられたる板座の光、その光を見よ。
□平凡の光、凡山凡水、凡山凡境、それでよろしい。
※[#二重四角、258-12]自然現象――生命現象――山頭火現象[#「――山頭火現象」は底本では「――山頭火現象」]。
※[#二重四角、258-13]自己のうちに自然を観るといふよりも、自然のうちに自己を観るのである(句作態度について)。
※[#二重四角、258-14]したい事をして、したくない事はしない――これが私の性情であり信条である、それを実現するために、私はかういふ生活にはいつた(はいらなければならなかつたのである)、そしてかういふ生活にはいつたからこそ、それを実現することが出来るのである、私は悔いない、恥ぢない、私は腹立てない、マガママモノといはれても、ゼイタクモノといはれても。……
□自己の運命に忠実であれ、山頭火は山頭火らしく。
   清丸さんに
・こゝのあるじとならう水仙さいた
・こゝに舫うてお正月する舳をならべ
   坊ちやん万歳
・霜へちんぽこからいさましく
 霜晴れの梅がちらほらと人かげ
・耕やすほどに日がのぼり氷がとける
 足音、それはしたしい落葉鳴らして(友に)
・みんないんでしまへばとつぷりと暮れる冬木
・ふけてひとりの水のうまさを腹いつぱい

 一月十一日 晴、あたゝかい。

近頃の食物の甘さ――甘つたるさはどうだ、酒でも味噌でも醤油でもみんな甘い、甘くなければ売れないさうだが、人間が塩を離れて砂糖を喜ぶといふことは人間の堕落の一面をあらはしてゐると思ふが如何。
朝、浜松飛行隊へ入営出発の周二君を駅に見送る、周二君よ、幸福であれ。
前の菜畑のあるじから大根を貰ふ、切干にして置く、大根は日本的で大衆的な野菜の随一だ。
よい晩酌、二合では足りないが三合では余ります。
うたゝね、宵月のうつくしさ。
   周二君を送る三句
 落葉あたゝかう踏みならしつゝおわかれ
・おわかれの顔も山もカメラにおさめてしまつた
・おわかれの酒のんで枯草に寝ころんで
・甘いものも辛いものもあるだけたべてひとり
 枯草を焼く音の晴れてくる空
・枯木に鴉が、お正月もすみました
 送電塔が、枯れつくしたる…

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