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公益に有害の鉱業を停止せざるの儀に付質問書
こうえきにゆうがいのこうぎょうをていしせざるぎにつきしつもんしょ
作品ID4958
著者田中 正造
文字遣い旧字旧仮名
底本 「田中正造之生涯」 国民図書
1928(昭和3)年8月20日
入力者林幸雄
校正者富田倫生
公開 / 更新2003-06-09 / 2014-09-17
長さの目安約 43 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

        公益に有害の鑛業を停止せざる儀に付質問書

(明治三十年二月廿六日、衆議院提出)
一、栃木縣上都賀郡足尾銅山鑛毒の慘酷なる事實は、今尚其被害地なる栃木群馬茨城埼玉の四縣下人民より提出しつゝある鑛業停止請願に依り又群馬縣々會も鑛業停止すべきを内務大臣に建議を爲したるを以て明なり。是れ一國の大問題にして一日たりとも等閑に附し去るを得ず。然るに多年政府の之を等閑に附し去る理由如何。
一、明治廿四年十二月十八日本員等は國務大臣に向て足尾銅山鑛毒被害に關する當局者の職責怠慢を質問せり。不幸にして第二議會解散に會ひ、其答辯書は新聞紙上に於て之を見たり。曰く其被害の原因に付て未だ確實なる試驗の成績に基ける定論あるに非ず。曰く、粉鑛採聚器を新設し一層鑛物の流失を防止するの準備をなせりと。然るに爾來鑛業の増加は益々甚しく、被害の區域愈々擴大せし事實あるは如何。
一、明治廿五年五月廿三日、本員等は如此前後撞着の答辯に對し更に第二囘の質問をなし、農科大學の試驗成績を以て國務大臣の明答を促したり。然るに其答辯には、鑛業の害たるは試驗の結果によりて之を認めたりと自白しながら、其損害たるや鑛業を停止すべき程度には非ずと主張し、且つ鑛業人に於ては現に粉鑛採聚器設置の準備を爲し、將來植物の生長を害する如き事なしと斷言しながら、其所謂粉鑛採聚器を設置したる六週年後の今日、鑛業の被害益々増加するを默視するの理由如何。
一、同年六月十三日、本員等は右の答辯に對し更に第三囘の質問をなせり。然るに其質問中に於て、政府は地方官をして鑛業人の爲に仲裁せしめ、地方官亦粉鑛採聚器据付の一事を以て巧に被害地人民を欺瞞し、人民提出の請願書を遮りて強て事實を蔽はんとする等立憲治下にあるまじき所行を專にし、而も中央政府は何等の答辯をなし得ざりし理由如何。
一、明治廿六年十二月第五議會解散に次で、翌廿七年第六議會又解散せられ、空しく質問の機を失せり。時偶々日清戰爭に際せるを以て、擧國一致の必要より、本員等又政府に對する質問は暫く枉げて中止することゝし、力めて官民の協戮を圖れり。然るに廿七年の洪水にて鑛毒の流出益々多大なるの實況を見るや、鑛業人の狼狽一方ならず、地方官又同じく前項の盡力一空に歸せんことを恐れ、壯丁出陣の不在を窺ひて日々被害町村に出沒し、老夫幼童を威嚇して、自己隨意の契約證を作りて之に盲印を押さしめ、以て鑛業人の爲に謀らんとす。而も政府の之を默視する理由如何。
一、右に付本員等は日清戰爭終局を待ち、明治廿九年の議會に於て地方官吏の惡計を摘發し更に第四囘の質問を爲せり。然るに政府は漫然として之が答辯を爲さざるのみならず、今尚依然として其行爲を改めざるの理由如何。
一、前項の如くにして、明治廿七年の洪水以降年々増加する鑛毒啻に渡良瀬川に止らず、今や利根川北岸に迄浸漸して、四縣下十郡數萬町歩の田…

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