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アメリカ人に問う
アメリカじんにとう
作品ID49839
著者三好 十郎
文字遣い新字新仮名
底本 「三好十郎の仕事 第三巻」 學藝書林
1968(昭和43)年9月30日
初出「中央公論」1953(昭和28)年5月号
入力者富田倫生
校正者伊藤時也
公開 / 更新2009-08-06 / 2014-09-21
長さの目安約 16 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 すべてのアメリカ人諸君。
 誤解が起きるのを避けるために最初にことわっておきますが、私はアメリカを良い国だと思い、アメリカ人をよい人たちだと思っている者です。あなたがたは若くエネルギッシュで率直で、正義と自由に立とうとしており、他国にたいして寛大で親切です。
 私および私どもは戦争が終ってから八年のあいだあなたがたの姿とあなたがたが私たちにむかってなさったことを注意ぶかく見てきました。その八年めの結論としてこのことを言っているのです。
 私および私に似たような日本人の多数が、あなたがたを良い人たちだと思っているという事実を、あなたは信じてくださってよろしい。
 なぜこのようなことを最初に言うかといいますと、私はこれから、もしかするとあなたの気にさわるかもしれないある質問をあなた宛てにしようとしているからです。
 たぶん、たしかにそれはあなたにとって愉快な質問ではない。もともと私はどんな意味ででも、あなたに不快をあたえたくない。だのにこんな質問をあえてするわけは、それはどうしてもしなければならぬ質問だからです。私は八年間、言いだすのを控えていましたが、しかし結局はどうしても言いださないではいられない。そういう欲望と同時に必要があるのです。私だけにとって必要であるばかりでなく、私とあなたとの今後の関係にとっても絶対に必要な質問であると思います。だから質問の結果、一時的に多少あなたを不快にさせたりするかもしれないと心配しながらも、言いださないわけにはいきません。そしてたぶん最後まで読んでくださればわかってもらえるであろう――そういうつもりで、言いだしてみるのがよいと私は考えます。
 それに、これを言いだしてみるということそれ自体が、私があなたがたを人間として信頼している――すくなくともある程度までは――ということは、私の質問の表面的な不愉快さにたいする反感のために、この質問を持ちだそうと思った私の真意までを曲解なさるほど不公正な人間であなたがないと、私が思っているということです。
 そこで、私の質問はどんな質問かといいますと、原子爆弾についてであります。もっとくわしく言うと、原子爆弾とあなたがたが拠ってもって立っている民主主義との関係についてであります。
 私は昨年(一九五二年)すえのある新聞につぎのような文章を寄稿しました。

「友人と私は喧嘩をした。しかけたのは私で、その動機はまちがっていた。喧嘩中に友人はひどい兇器を使った。
 喧嘩は私が負けて、私はあやまって、今後ながくこの友人と仲よくしていきたいと思っている。
 ところが友人はその兇器をまだふところに持っている。軽率に出して使いはすまいが、でも、彼がどういう理由でどんな気持になったときに使うかがハッキリわからないので、こちらは不安で、気を許してほんとに仲よくしてもらうわけにはいかない――。
 アメリカが…

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