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愛ちやんの夢物語
あいちゃんのゆめものがたり
原題ALICE'S ADVENTURES IN WONDERLAND
著者
翻訳者丸山 英観
文字遣い旧字旧仮名
底本 「愛ちやんの夢物語」 内外出版協會
1910(明治43)年2月1日
入力者田中哲郎
校正者みきた
公開 / 更新2018-07-04 / 2018-06-29
長さの目安約 135 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

はしがき

此書は有名なレウィス、キァロルと云ふ人の筆に成つた『アリス、アドヴェンチュアス、イン、ワンダーランド』を譯したものです。邪氣なき一少女の夢物語、滑稽の中自ら教訓あり。むかし、支那の莊周といふ人は、夢に胡蝶と化つたと云ふ話しがありますが、夢なればこそ、漫々たる大海原を徒渉りすることも出來ます、空飛ぶ鳥の眞似も出來ます。世に夢ほど面白いものはありません。今少時、※[#「女+(「第−竹」の「コ」に代えて「丿」)、「姉」の正字」、U+59CA、1-7]さんの膝を枕の假寐に結んだ愛ちやんの夢、解いてほどけば美しい花の數々、色鮮かにうるはしきを摘みなして、この一篇のお伽噺は出來あがつたのです。
明治四十二年十二月
譯者
[#改丁]

第一章
 兎の穴へ

 愛ちやんは、※[#「女+(「第−竹」の「コ」に代えて「丿」)、「姉」の正字」、U+59CA、1-4]さんと堤の上にも坐り勞れ、その上、爲ることはなし、所在なさに堪へ切れず、再三※[#「女+(「第−竹」の「コ」に代えて「丿」)、「姉」の正字」、U+59CA、1-5]さんの讀んでる書物を覘いて見ましたが、繪もなければ會話もありませんでした。愛ちやんは、『繪もなければ會話もない書物が何の役に立つだらうか?』と思ひました。
 それで愛ちやんは、慰みに雛菊で花環を造つて見やうとしましたが、面倒な思ひをしてそれを探したり摘んだりして勘定に合ふだらうかと、(暑い日で直に眠くなつたり、[#挿絵]然するものだから一心に)心の中で考へてゐますと、突然可愛い眼をした白兎が、その傍に驅け寄つて來ました。
 が、これぞと云ふ程の事もありませんでした。又愛ちやんは、兎が途から駈け出して來て、『あァ/\遲くなつた』なんて云ふだらうとは些とも思ひませんでした。(後からよく考へて見れば不思議だが、其時にはそれが全く通常のやうに思はれました)が、其時兎は實際襯衣の衣嚢から時計を取出して、それを見てゐましたが軈て駈け出しました、愛ちやんも亦駈け出しました。愛ちやんは兎が襯衣の衣嚢から時計を取出して、面白さうにそれを燒いて了うなんてことを、是れまで决して見たことがないわと心に一寸思ひました。愛ちやんは野原を横斷つて其後を追蒐けて行つて、丁度それが生垣の下の大きな兎穴に跳び下りるのを見ました。
 直ぐ其後から愛ちやんも下りて行きました。今度は何うして出て來やうかと云ふやうなことは些とも考へずに。
[#挿絵]
 兎の穴は暫くの間隧道のやうに眞直に通じて居ました。止まらうと思ふ隙もない程急に、愛ちやんは非常に深い井戸の中へ落ちて、びッしよりになりました。
 井戸が深かつたのか、それとも自分の落ちるのが極めて徐かつた所爲か、落ち切つてから身の周りを見廻し、此先何うなるだらうかと疑ひ出した迄には隨分長い間經ちました。最初愛ちやんは下を見、それから今迄の事…

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