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西洋の丁稚
せいようのでっち
作品ID50091
著者三遊亭 円朝
文字遣い新字旧仮名
底本 「明治の文学 第3巻 三遊亭円朝」 筑摩書房
2001(平成13)年8月25日
入力者門田裕志
校正者noriko saito
公開 / 更新2009-07-22 / 2014-09-21
長さの目安約 3 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 エー若春の事で、却つて可笑みの落話の方が宜いと心得まして一席伺ひますが、私は誠に開化の事に疎く、旧弊の事ばかり演つて居りますと、或る学校の教員さんがお出でで、お前はどうも不開化の事ばかり云つて居るが、どうか然うなく開化の話をしたら宜からう、西洋の話をした事があるかと仰しやいました、左様でございます、マア続いた事は西洋のお話もいたしましたが、まだ落話はいたしませんと申したら、落話で極面白い事があるから一席教へて上げようといふので、教はり立のお話しでございます、拙い処は幾重にもお詫をいたして弁じまする。
 西洋の子供は至て利口だといふお話で。或る著述をなさるお方がございます。是はやはり日本でも同じ事で、著作でもなさる方は誠に世事に疎いもので、何所か気の附かん所があります、学問にもぬけてゐても何かに疎いところがあるもので、伊太利の著作家で至つて流行の人があつて、其処へ書林から、本を誂らへまするに、今度は何々の作をねがひますと頼みに行きまする時に、小僧が遣物を持つて行くんです。処が西洋では遣物を持つて行つた者に、使賃といつて名を附ける訳ではないが、弗の二ツ位は呉れるさうでございます。然るに其の作者先生、物に気の附かん先生でございまして、茫然として居りますから使賃をやらない。書林の小僧が怒つて、あんな吝嗇な奴はありやアしない、己が行く度に使賃を呉れた事がない、自分の家ならばもう行きやしないと思つても、奉公の身の上だから仕方がなく、マア使にも行かなければならない。其次行つた時に、腹が立ちましたからギーツと表を開けて、廊下をバタ/″\駈出して、突然書斎の開き戸をガチリバタリと開けて先生の傍まで行きました、先生は驚いて先「誰だえ。小「へえ今日は。先「何だ、人が書物をして居る所へどうもバタ/″\開けちやア困るぢやアないか。小「へえ、宅の主人が先生へ是を上げて呉れろと申ましたから持つて参りました。先「ウム、マア夫は宜いがね、どうもお前何ぼ使だつて、余り無作法過るぢやアないか、能く物を弁へて見なさい、マア私の家だから宜いが、外へ行つて然んな事をすると笑はれるよ、さア使の仕様を僕が教へて上るからマア君椅子に腰を掛け給へ、君が僕だよ、僕が君になつて、使に来た小僧さんの声色を使ふから大人しく其処で待つてお出で、僕のつもりでお出でよ。小「へえ、宜しうございます。先「エー御免下さい、お頼み申ます。ト斯う静に開戸を開けなければ往ない。小「へえー。先「エーお頼み申します/\。小僧は、ツト椅子を離れて小「ドーレ。先「中々旨いな、旨くやるねえ。小「何方からお出でだ。先「中々うまいね……エー私は書林から使に参りましたが、先生にこれは誠に少々でございますが差上げて呉れろと、主人に斯様申されまして、使に罷り出でました。小「アー大きに御苦労、折角の思召しだから受納いたしまする。先「中々旨いねえ……是で帰…

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