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にゆう
にゆう
作品ID50095
著者三遊亭 円朝
文字遣い新字旧仮名
底本 「明治の文学 第3巻 三遊亭円朝」 筑摩書房
2001(平成13)年8月25日
入力者門田裕志
校正者noriko saito
公開 / 更新2009-09-23 / 2014-09-21
長さの目安約 11 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 昔浅草の駒形に半田屋長兵衛といふ茶器の鑑定家がございました。其頃諸侯方へ召され、長兵衛が此位の値打が有るといふ時は、直に其の代物を見ずに長兵衛が申しただけにお買上になつたと云ふし、此人は大人でございますから、大概な処から呼びに来ても頓と参りません。家には変な奉公人を置きまして、馬鹿な者を愛して楽しんでゐるといふ極無慾な人でございました。長「何を、往かねえよ、何だと。女房「でもお手紙が参りましたよ。長「何処から。女房「萬屋五左衛門さんから。長「ムウン又迎ひか、どうも度々招待状をつけられて困るなア、先方は此頃茶を始めたてえが、金持ゆゑ極我儘な茶で、種々道具を飾り散かして有るのを、皆なが胡麻アするてえ事を聞いたが、己ア然ういふ事をするのが厭だから断つてくんなせえ。女房「だつて貴方、度々の事ですから一度往らつしやいな、余り勿体を附けるやうに思はれるといけませんよ。長「茶も何もやつた事のねえ奴が、変に捻つたことを云つたり、不茶人が偽物を飾つて置くのを見て、これは贋でございますとも謂へんから、あゝ結構なお道具だと誉めなければならん、それが厭だから己の代りに彼の弥吉の馬鹿野郎を遣つて、一度でこり/\するやうにしてやらう。女房「お止し遊ばせよ、あなたは彼を怜悧と思召して目を掛けていらツしやいますが、今朝も合羽屋の乳母さんが店でお坊さんを遊ばして居る傍で、弥吉が自分の踵の皮を剥いて喰べさせたりして、お気の毒な、子供衆だもんですから、何も知らずむしや/\喰べて居ましたが、本当に汚い事をするぢやア有りませんか、それに此頃では生意気になつて、大人に腹を立たせますよ。長「いや、馬鹿と鋏は使ひやうだ、お前は嫌ひだが、己は嗜だ……弥吉や何処へ往つた、弥吉イ。弥「えゝー。長「フヽヽ返事が面白いな……さ此方へ来い。弥「えゝー。長「何だ大きな体躯をして立つてる奴が有るか、坐んなよ。弥「用が有るなら直に往つて来るにやア立つてる方が早えや。長「馬鹿だな、苟且にも主人が呼んだら、何か御用でも有りますかと手を突いて云ふもんだ、チヨツ(舌打ち)大きな体躯で、汚え手の垢を手の掌でぐる/\揉んで出せば何の位の手柄になる、物を積つて考へて見ろ、それに此頃は生意気になつて大分大人にからかふてえが、宜くないぞ、源蔵見たやうな堅い人を怒らせるぢやアねえぞ。弥「なに彼の人はね疝気が起つていけないツてえから、私がアノそれは薬を飲んだつて無益でございます、仰向けに寐て、脇差の小柄を腹の上に乗けてお置きなさいと云つたんで。長「ムヽウ禁厭かい。弥「疝気の小柄ツ腹(千住の小塚原)と云つたら怒りやアがつた、跡から芳蔵の娘が労症だてえから、南瓜の胡麻汁を喰へつてえました。長「何だい、それは。弥「おや/\労症南瓜の胡麻汁つて。長「馬鹿な事を云ふな、手前は江戸ツ子ぢやアねえぞ、十一の時三州西尾の在から親父が手を引いて家へ連れて来て、…

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