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林檎のうた
りんごのうた
作品ID50158
著者片山 広子
文字遣い新字旧仮名
底本 「燈火節」 月曜社
2004(平成16)年11月30日
入力者竹内美佐子
校正者伊藤時也
公開 / 更新2010-11-22 / 2014-09-21
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


麦の芽のいまだをさなき畑に向く八百屋の店は一ぱいの林檎
深山路のもみぢ葉よりも色ふかく店の林檎らくれなゐめざまし
立ちて見つつ愉しむ心反射して一つ一つの林檎のほほゑみ
みちのくの遠くの畑にみのりたる木の実のにほひ吾を包みぬ
手にとればうす黄のりんご香りたつ熟れみのりたる果物の息
すばらしき好運われに来し如し大きデリツシヤスを二つ買ひたり
宵浅くあかり明るき卓の上に皿のりんごはいきいきとある
わがいのる人に言はれぬ祈りなどしみじみ交る林檎のにほひ
人多く住みける家をおもひいづ林檎をもりし幾つもの皿
饗宴のをはりしあとの静かさに時計を聴きぬ電気さやけく



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