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酒
さけ |
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作品ID | 50402 |
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著者 | 正岡 子規 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「飯待つ間」 岩波文庫、岩波書店 1985(昭和60)年3月18日 |
初出 | 「ホトトギス 第二巻第九号」1899(明治32)年6月20日 |
入力者 | ゆうき |
校正者 | noriko saito |
公開 / 更新 | 2010-05-22 / 2014-09-21 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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○一つ橋外の学校の寄宿舎に居る時に、明日は三角術の試験だというので、ノートを広げてサイン、アルファ、タン、スィータスィータと読んで居るけれど少しも分らぬ。困って居ると友達が酒飲みに行かんかというから、直に一処に飛び出した。いつも行く神保町の洋酒屋へ往って、ラッキョを肴で正宗を飲んだ。自分は五勺飲むのがきまりであるが、この日は一合傾けた。この勢いで帰って三角を勉強しようという意気込であった。ところが学校の門を這入る頃から、足が土地へつかぬようになって、自分の室に帰って来た時は最早酔がまわって苦しくてたまらぬ。試験の用意などは思いもつかぬので、その晩はそれきり寐てしまった。すると翌日の試験には満点百のものをようよう十四点だけもらった。十四点とは余り例のない事だ。酒も悪いが先生もひどいや。
〔『ホトトギス』第二巻第九号 明治32・6・20〕