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道具と餌と天候
どうぐとえさとてんこう
作品ID50605
著者佐藤 垢石
文字遣い新字新仮名
底本 「垢石釣游記」 二見書房
1977(昭和52)年7月20日
入力者門田裕志
校正者塚本由紀
公開 / 更新2015-08-29 / 2015-05-24
長さの目安約 3 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 釣道具の呼称については解釈のつかぬものが多い。大概の釣人は知らぬがままに買っているのである。たとえばテグスの何毛柄とか、鈎の何厘とかいったように、何を基準としているか見当のつかぬのがある。知っている人には馬鹿々々しいことであるが、大衆のために簡単に解説しよう。
 テグスの毛、厘、分というのは百本に対する重量を平均した一本の重量を呼ぶのである。飛切の極細をケヌキと呼んで五毛柄と六毛柄とがある。それより少し太くなって八毛柄、次に一厘柄から九厘までの太柄があり、一分から一分四厘柄までを極太柄という。鈎の大きさの呼称は関東と、関西とでは違う。関東では材料に用いた鋼鉄線の一尺の重量で何厘または何分と区別しているが、関西では鈎をのばした長さで何寸何分と区別する。であるから東京の釣具店では、東京製の鈎を袖あるいは丸形の一分とか、九厘とかいって売っているのに対し、関西では伊勢尼の寸とか行田形の五厘といって売っているのである。また道綸の呼称もいろいろに別れている。人造テグスと渋引糸は、一把の重量によって一匁とか十五匁とかいい、秋田糸は絹糸のより合せ数により十二本よりとか百本よりとかと称している。その他道綸には麻糸、綿糸、ワイヤーなどがあるが、これは主として職業漁師が用いるのであるから、遊漁者は知らんでもよろしい。
 餌の種類はなかなか多いのでこれも一応知って置く必要がある。餌は普通活餌、生餌、共餌、練餌、まき餌、漬餌、擬餌などと別れている。そのうち最も多く用いられているのが活餌のうちの毛足類ゴカイ、イトメ、バチ、袋イソメ、岩イソメ、砂イソメ、ドバミミズ、シマミミズ、ボッタ、ヒル、蝦、蟹類、車蝦、芝蝦、赤蝦、藻蝦、甲殻類の鯖蟹、豆蟹、幽霊シャコ、アミ、昆虫類のハヘ、蛾、イナゴ、カワゲラ、蚕、サナギ、ウジ、玉虫、柳の虫、イタドリの虫、カマエビの虫、川虫、魚類ではイワシ、ドジョウ、柳ハエ、小鮎などである。生餌では頭足類のタコ、イカ、斧足類の蠣、シジミ、ハマグリ、アサリなど。擬餌には獣角、骨、羽毛、獣毛、ゴム、魚皮、金属、絹糸などがある。その他こまかくあげれば際限がない。
 それから釣人は天候について知識を持っている必要がある。上げ潮と同時に降り出した雨はやまない、雨は下げ潮時にはれる。時候外れに暑いも寒いも雨。月は昇りに、日は下りにかさのある時は雨。かさの中に、星が見え透けば曇りですむ。日の出前に、日足さしたるは雨か風。風は、夜明けの雲筋立った方から来る。朝焼けの紫色がかった時は雨。朝、乾の方に霞立ちたる時は朝のうち北風、日中は和風がある。雲、日に向って飛べば晴天。にじの立つも晴天。西の空に紫色の雲立つも晴天。夕焼けは明日晴れ。秋の東風は薄曇り。夕焼けの少し黒ずんだ時は明日雨。日の入りに曇った時は、翌日雨で南々東風か、北東風吹く。月の光白きは晴天。月の輪に星なきも晴天。星さえてき…

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