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人格の養成
じんかくのようせい
作品ID50727
著者新渡戸 稲造
文字遣い新字新仮名
底本 「新渡戸稲造論集」 岩波文庫、岩波書店
2007(平成19)年5月16日
初出「をんな 五巻四号」大日本女学会、1905(明治38)年4月15日
入力者田中哲郎
校正者ゆうき
公開 / 更新2010-07-29 / 2014-09-21
長さの目安約 12 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 久振で東京へ帰ッて参りまして、安心して休むつもりであッたところが、突然お呼出しになりまして、定めし何にか御馳走でもあるじゃろうと思ッて来たところが、二階の階段で演説をという命令である。台湾から帰ッたばかりで、とても面白い話など出来る次第でもなし、けれども台湾に行ッたからというて、舌を落して来たという訳でもなし、日本語を忘れたという訳でもないからして、絶対的にお話出来ぬというお断りは出来ない。しかしただ今も横井さんの有益なる御深切なお話のあとで、私は何も附加えることはない、殊にあなた方はもう既に保険料をお払済になッたろうと思うのである。私もしばしばこの保険会社の人に押込まれて、何々保険会社から入れと言うて来るかと思うと、直後から他の会社から来る、中々勉強するものである。然るにあなた方に対しては恐らく横井さんが初めての申込であッて、後から来るものは定めしうるさいだろうとお思いになるだろう。故に私は何も保険申込はしないから、それだけは御安心下さい。
 また横井さんのお話の後で、ただ今申した通り、加えることはないが、すこぶる御同感の点が多い、多いどころではない悉く御同感である。今日は卒業式とかいう話であッたが、あなた方が何か巻物を持ッておるところを見ると、多分卒業式は済んだのであろう。してみるとこれから世の中に出られるという方々が何人かおいでになる。私は此処へ参りましたついでに、十分か十五分を期して世の中に出られる方に一言を申し、それから残ッておられる方々に一口申したいと思う。世の中に出られる方は、どういう成功の条件が必要であるかということは、既にお話があッたが、ただそれを実行出来るや否や、ここが大切である。女の勢力というものはひどいもので私の知人の世の中を永く見た人が言うたことがある、世の中は三つのぽうで治まッておる。一つは鉄砲、これはマア吾々が今日新聞を取ッて見てもすぐ分る。第二は説法というので即ち宗教というのであろう、本願寺を始めとして到る処に建ッておる教会を見ても分る。第三のは女房というやつ、これは恐ろしい勢力を持ッておるものだそうです。この三つのぽうで世の中が治まッておるのであるという。このうちにも最も勢力のあるという女房というのは、マアこの辺から出られるのであろう。他からも大分出るのであるけれども、マアここからも出るのであろう。よし女房にならぬと言うても、女房というのは広い意味においては婦人ということである、何も人の妻のみには限らない。その広い意味においての女房というものは如何にして成功するか、即ち人の妻であッたならば、どうして自分の夫を支配して押付けて行くことが出来るか、というこの成功の保険などはどうである。これも横井さんのお話の条件を守ッたら、自分の夫を押えるのみならず、世界を治める事も出来よう、ただその一の要素としてお話しなすッた。例えば一つの身…

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