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星の世界から
ほしのせかいから
作品ID50979
著者小川 未明
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 1」 講談社
1976(昭和51)年11月10日
初出「少年倶楽部」1917(大正6)年9月
入力者ぷろぼの青空工作員チーム入力班
校正者ぷろぼの青空工作員チーム校正班
公開 / 更新2012-01-11 / 2014-09-16
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)

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本文より



 良吉は貧しい家に生まれました。その村は寂しい、森のたくさんある村でありました。小鳥がきてさえずります。また春になると、白い花や、香りの高い、いろいろの花が咲きました。
 良吉には仲のいい文雄という同じ年ごろの友だちがありました。二人はいつもいっしょに棒を持ったり、駆けっこをしたり、また、さおを持って河にいったりして、仲よく遊びました。
 村はずれには河が流れていました。その水はたくさんできれいでありました。河のほとりには草が茂っていました。二人はその草の上に腰を下ろして、水を見つめながら釣りをいたしました。
 また風の吹く日には、いっしょにくりの実を拾って歩きました。また枯れ枝などを拾ってきて、親の手助けなどをいたしたこともありました。こうして二人は、なんでも持っているものは、たがいに貸し合って仲よく遊びました。たまに両親が町へいって買ってきてくれた絵草紙や、おもちゃなどがあると、それを良吉は文雄にも見せてやったり、貸してやったりいたしました。また、文雄も同じことで、なにか珍しいものが手に入ると、きっとそれを良吉のところへ持ってきて見せました。二人の間では、なんでも差別なくして仲よく遊びました。だから、その村は町から遠くはなれていて、さびしい村でありましたけれど、二人はけっしてさびしいとは思いませんでした。二人はいつも、楽しく仲よくして遊んでいました。
 しかし、不幸というものは、いつ人間の身の上にやってくるものだかわかりません。ある寒い、もう秋も老けてゆくころでありました。文雄は、ふとしたかぜをひきました。そして、それがだんだん重くなって床につきました。良吉は心配して、毎日のように文雄の家へいっては、病気をみまいました。文雄の両親もいっしょうけんめいで看病いたしました。けれど、ついに文雄はなおりませんでした。枕もとにすわって、心配そうに自分の顔を見つめている、友だちの良吉をじっと見て、
「早くなおって、また君といっしょに遊ぼうね。」
と、文雄はやつれた姿になりながら、にっこりと笑っていいました。
「ああ、遊ぼうよ、君、気分はちっとはいいかい。」
と、良吉は笑顔になって、そのやせた哀れな友だちの手を握りました。しかし、これが別れでありました。とうとう文雄はその晩死んでしまいました。



 良吉は悲しさのあまり泣きあかしました。文雄は村のお寺の墓地に葬られました。良吉は文雄のお葬式のときにも泣いてついてゆきました。それからというものは、彼は毎日のように暇さえあればお寺の墓地へいって、文雄の墓の前にすわって、ちょうど生きている友だちに向かって話すと同じように語りました。
「君、さびしいだろうと思って僕は遊びにきたよ。」
と、良吉はいいました。木枯らしは、そのさびしいほかにはだれも人影のいない墓地に吹きすさんで、枯れた葉が、空や、地の上にわびしくまわっ…

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