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鎖国
さこく
副題日本の悲劇
にほんのひげき
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「鎖国」 筑摩叢書、筑摩書房
1964(昭和39)年5月25日
入力者冬木立
校正者小澤晃
公開 / 更新2018-12-31 / 2018-11-24
長さの目安約 890 ページ(500字/頁で計算)
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本文より




 この書は近世初頭における世界の情勢のなかで日本の状況・境位を考察したものである。著者はその境位の特徴を最も端的に現わすものとして「鎖国」という言葉を選んだが、それはここでは「国を鎖ざす行動」を意味するのであって、「鎖ざされた国の状態」を指すのではない。後者は前者の結果として現われたものであり、また目下のわが国の情勢を考察するに際して参考となるべき多くの問題を含んでいるが、しかしそれはまた別の取扱いを必要とするであろう。
 この書の内容をなす個々の事項は、それぞれの専門家によって既に明らかにされていることのみであって、何一つ著者が新しく発見したことはない。しかし、それらの数多くの事項をこの書のような聯関において統一し概観するということは、恐らく初めての試みであると思う。著者は日本倫理思想史を考究するに当ってその種の概観の必要を痛感し、頻りにそういう著述を求めたのであったが、得られなかった。偶々戦時中、東京大学文学部の著者の研究室において、「近世」というものを初めから考えなおして見る研究会を組織し、西洋と東洋とに手を分けて、十人ほどの仲間といろいろとやって見たとき、著者にほぼ見とおしがついて来たのである。その際西洋の側では山中謙二教授、金子武蔵教授、矢嶋羊吉教授、日本の側では古川哲史教授、筧泰彦教授、日本キリシタンについては勝部真長教授から多くの益を得た。爆撃下の東京において、或は家を焼かれ、或は饑に苦しみながら、この探究の灯を細々ととぼし続けたことに対し、右の同僚諸氏に深く感謝の意を表したい。
 本書の前篇の資料として著者が使ったのはたかだか Hakluyr Society の叢書位のものであるが、しかし方面違いの著者がこの叢書に親しんだということには、妙な因縁がある。多分昭和十一、二年の頃と思うが、丸善からアコスタの The Natural and Moral History of the Indies を売り込みに来た。Edward Grimston の英訳で一六〇四年の刊本である。当時の相場でたしか百円位であったと思う。しかし一年の図書費が三百円ほどに過ぎない研究室としては、この購入は相当に慎重を要するものであった。またアコスタについて当時何も知らなかった著者は、この書の価値をも判じ兼ねた。そこで著者は一応この書を読んで見たのである。そうして、何の期待も持っていなかっただけに殆んど驚愕に近い感じを受けた。ところで購入のために重複調べをさせて見ると、アコスタの英訳本は既に図書館に備えつけてあった。それがハクルート叢書の復刻本である。ここで著者は初めてハクルート叢書の存在を知り、第一期刊行の百冊のうちだけでも実に多くの興味深いものが揃っているのを見出した。図書館にあるのは大正大震災後英国から寄贈されたもので、百冊のうち四十四、五冊に過ぎなかったが、…

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