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化学改革の大略
かがくかいかくのたいりゃく
作品ID51403
著者清水 卯三郎
文字遣い新字新仮名
底本 「明六雑誌(中)〔全3冊〕」 岩波文庫、岩波書店
2008(平成20)年6月17日
初出「明六雜誌 第二十二號」明六社、1874(明治7)年12月19日
入力者田中哲郎
校正者きゅうり
公開 / 更新2021-03-04 / 2021-08-29
長さの目安約 4 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 西哲の学術における、おのおのその学派にしたがいて社を結び、彼の学ぶところは我が知らざるところを補い、我が知るところは彼の学ばざるところに充て、もって相交換し、もって相討論して、しかしてその説を定む。化学のごときもまた、また然り。
 数年以来ポトアシクソルフェート(すなわち硫酸剥篤亜斯)、ポトアシクヨテェート(すなわち沃酸剥篤亜斯)、ソヂクカルボナァート(すなわち炭酸曹達)等の名称をもって舶載する化学薬品あり。余はじめその名の相反するを疑い、あるいは羅甸の名とす。後、新書を得てはじめてその学の一大変革あるを知る。余がこのことを知るの遅きは、欧州化学社中に入らざるの過ちとす。およそ一派の学には一派の社あり、その社に入てその説を求めざれば、新規発明を得ること能わず。今その名の相反する理を述て、ここにその大略を視す。
 けだし電気の化学における、もっとも要とするところにして、原質すなわち元素六十四品(あるいは六十三とし、あるいは六十五とす)のごとき、悉皆電気の在るありて各自孤陰〈(ネガチブ)〉、独陽〈(ポシチブ)〉の別なきことなし。孤陰、独陽の別ありて孤陰は独陽に配し、独陽は孤陰に合し、もって雑質を生ず。すなわち尋常の薬品なり。しかれども陰陽原質の多寡によりてその名を異にす。たとえば酸化鉄は酸素の多寡にしたがいて鉄[#挿絵]〈(サビ)〉といい、鉄紅〈(ベンガラ)〉というがごとし。しかれども鉄は酸素において独陽たり、ゆえに今の化学にありては鉄酸化と云わざることを得ず。ここにその順序を列す。
[#改ページ]
          孤陰ノ端
            −
紅銅       酸素
ウラニオム    硫黄
ビスモット    窒素
錫        フルヲリン
インヂオム    コロリン
鉛        ヨヂン
カドミオム    セレニオム
タリオム     燐素
コバルト     砒素
ニクケル     コロミオム
鉄        ワナチヨム
亜鉛       モルブデニウム
マンガネス    チュングステン
ランタニオム   硼素
ヂデイニオム   炭素
セリオム     アンチモネ
シルコニオム   テルリオム
アルミニオム   タンタリウム
エルビオム    コロンビオム
エトリオム    チタニオム
クリユシニオム  硅素
マンガネシオム  水素
カルシオム    黄金
ストロンチオム  オスミオム
バリオム     イリヂオム
リヂオム     プラチニウム
ソヂオム     ロヂオム
ポトアシオム   ルテニオム
ルビヂオム    パラヂオム
ケイシオム    水銀
 +       白銀
独陽ノ端
[#改ページ]
 右に挙る表は、酸素を孤陰の端としケイシオムを独陽の端とす。その各箇質点〈(アトム)〉はその上にある質点に孤陰たり、またその下にある…

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