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禾花媒助法之説
かかばいじょほうのせつ
作品ID51405
著者津田 仙
文字遣い新字新仮名
底本 「明六雑誌(下)〔全3冊〕」 岩波文庫、岩波書店
2009(平成21)年8月18日
初出「明六雜誌 第四十一號」明六社、1875(明治8)年9月5日
入力者田中哲郎
校正者officeshema
公開 / 更新2022-04-24 / 2022-03-27
長さの目安約 6 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 明治六年、維納府大展覧会の開場のとき、拙者もその差遣せられた官員の一人でありました。当時〈(そのとき)〉目に触れ、耳に聴くところの利益は、種々様々でありました。
 ときに農学〈(アグローム)〉の大家荷蘭人荷衣白蓮〈(ホーイブレング)〉氏という大先生に邂逅しました。これは実に拙者、無上の大幸でありました。幸に先生は維納府外数里の地に住居でありました。拙者一見手を握てほとんど傾蓋の想をなしました。拙者先生に引かれてその住居へ往きました。その後拙者、先生の家に客となり、半年教授を受けました。先生の性質、草木を愛することは、飢渇して飲食を求むるよりも嗜みます。
 二十余年前、維典堡〈(ウヰンテンボルグ)〉人西勃土〈(シーボルド)〉氏(訳がありて)荷蘭人となり、わが長崎へ来り、わが邦の草木を欧羅巴へ携え帰り、現今かの諸国に伝播しおるは、おおむね、みな先生の手を経たものであります。西人のわが草木を愛玩し、わが草木を貴重するは、実に先生より始りました。先生の功は、まことに盛なるものではありますまいか。
 先生ことさらに日本人を愛します。先生はなはだ親切にして、とくに拙者を眷愛し、先生つねに拙者を日本の愛児〈(デールソン)〉と呼びました。先生晨夕拙者に培養の術を親切に教えました。また試験実地に臨んでは、先生一に必ずその理とその法とを丁寧に講じました。先生つねに倦怠の色は少しも見えませぬ。ゆえに拙者、暫時間幸に先生多年実験するところの大概を覗うことを得ました。実に拙者、無上の大幸とはすなわちこのことであります。先生すでに年七旬に余ります。身体強健、なおよく鋤を執り、畚を荷い、旦暮灌漑して自ずから楽んでおります。いわゆる老而益壮なると申すは、この人の謂でござりましょう。
 ここに先生もっともわが世界に鴻益ある大発明の三件があります。すなわち拙者が上年撰述上木した農業三事の書がその大略であります。その第三件は禾花媒助の法をもって、去年九月十三日、東京第二大区十二小区麻布古川の稲田において実地に施し、十一月十三日収穫いたし、その稲と通例成熟の稲とを比較いたしたところが、驚くべきほど米の性質も上等になり、肥後米と秋田米ほども違うようになりました。しかのみならず、その収納高の概表は、すなわち左のとおりでござる。


甲の場所試験

一坪に付  媒助稲     旧法稲     差

升目    一升四合六夕  八合九夕    五合七夕
目方    四百九十五匁  二百八十一匁  二百十四匁
      六分      二分四厘    三分六厘

乙の場所試験

升目    一升八合三夕  一升四合三夕  四合
目方    六百十五匁   四百十三匁   二百〇二匁
      八分八厘    二分七厘    六分一厘

丙の場所試験

升目    一升二合三夕  八合五夕    三合…

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