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きょうだいの のねずみ
きょうだいの のねずみ
作品ID51550
著者小川 未明
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 16」 講談社
1978(昭和53)年2月10日
初出「コドモノヒカリ」1937(昭和12)年1月
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者笹平健一
公開 / 更新2024-05-11 / 2024-05-06
長さの目安約 3 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 はたけの 中で、きょうだいの のねずみが ふるえて いますと、とおりかかった いえねずみが、
「冬の あいだだけ わたしの うちへ おいでなさい。」
と いいました。
「ありがとう ございます。けれど、ねこが いますでしょう。」
と、のねずみが ききました。
「だいじょうぶですよ。いつも こたつに はいって ねむって いますから。」
と、いえねずみは わらいました。
「そんなら ばんに、おひっこしを しますよ。」
と、のねずみと、いえねずみは、やくそくを して わかれました。
「なあ おとうと、なにを おみやげに もって いったら、いい ものだろうな。」
と、あにねずみが いいました。
「どんぐりの みを ひろって いきましょうよ。」
と、おとうとねずみが こたえました。
「なるほど それが いい、おさかなや ごはんを たべあきて いる いえねずみさんには、どんぐりの みが めずらしいだろう。」
と、あにねずみも さんせいしました。

 二ひきの のねずみは、さっそく、どんぐりの 木の 下へ きました。そこには きのう、正ちゃんと 竹子さんが、おままごとを して あつめた どんぐりが たくさん おちて いました。竹子さんが、
「この 一本のが おにんぎょうよ。」
と いうと、
「四本足のが おうまだよ。」
と、マッチの ぼうを どんぐりに さして、正ちゃんが いいました。きょうだいの のねずみは おうまや おにんぎょうを みて わらいました。
 その ばんは さむい いい 月夜でした。あたりは ぎんの こなを まいたように、しもが ひかって いました。
 いえねずみは、かきねの ところまで むかえに でて いました。
「さあ、えんりょは いりません。この あなから おかっての たなを つたわって てんじょうへ おあがりなさい。」
と、いえねずみは あんないしました。気の 小さい のねずみが びくびくして いますと、いえねずみは 先に なって、どんぐりを てんじょういたの 上で ころ、ころ、ゴト、ゴト、と ころがしました。
「のねずみさんたちが やって きた、にぎやかに なって いいな。」
と、いえねずみの 子どもたちは はしゃぎました。
 この とき、こたつに あたって いる おばあさんが、
「また、ねずみが ふえたと みえて やかましいね、とらや、いって ごらんなさい。」
と、おばあさんは とらねこを こたつから おいだしました。
 とらねこは せのびを して あくびを しました。のそのそと おかってへ きて おさらの ごはんを たべると、また、もどって きました。そして おばあさんに むかって、
「べつに かわりが ありません。お正月なので、ねずみの ところへも おきゃくが あるのでしょう。」
と いって、ニャオと なきました。



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