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くびわの ない いぬ
くびわの ない いぬ |
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作品ID | 51553 |
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著者 | 小川 未明 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「定本小川未明童話全集 16」 講談社 1978(昭和53)年2月10日 |
初出 | 「幼年クラブ」1952(昭和27)年9月 |
入力者 | 特定非営利活動法人はるかぜ |
校正者 | 笹平健一 |
公開 / 更新 | 2024-04-07 / 2024-04-03 |
長さの目安 | 約 3 ページ(500字/頁で計算) |
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ふたりの 子どもが、いえの そとに たって いました。
「どこの いぬだろうね。」
と、二郎くんが、ちゃいろの いぬを みて いいました。
「しらないけれど、いい いぬだね。」
と、たけおくんは いって、口ぶえを ふきました。すると、いぬは、おとなしく そばへよって きました。ふたりは、かわるがわる いぬの あたまを なでて やりました。
すなおな せいしつと みえ、からだつきも のびのびと して、どこか りこうそうな かんじが しました。
「おや、くびわが ないね。」
と、二郎くんは、ふしぎに おもいながら、
「おまえ、どこで おとして きたの、いぬころしに つかまるぞ。」
と、いぬに むかって いいました。
たけおくんも、それに 気づいて、じっと、目を こらして いましたが、
「すていぬじゃ ないかな。なんだか ようすが すこし さびしそうだ。」
と、まえに いぬを かった ことの ある けいけんから、いいました。
二郎くんは、ポケットに あった キャラメルを だして、みちの 上へ なげて やりました。しかし、いぬは それを みただけで、ひろって たべようと しませんでした。
二郎くんは、じぶんが、キャラメルを 一つ たべて みせ、べつの てのひらに のせて、いぬの 口もとへ やりますと、いぬは、あんしんしたのか、よろこんで たべました。
「なかなか よく しつけが して あるね。」
と いって、たけおくんも、かんしんしながら みました。
ちょうど そこへ、せんたくやの こぞうさんが、まわって きました。
「この いぬは、すていぬなんですよ。」
と いったので、ふたりは、いまさらのように おどろきました。
こぞうさんが いうのには、まえの しゅじんは、ひじょうに この いぬを かわいがって いたのを、とおくへ ひっこすので、じぶんの いえを ゆずる かわりに、いぬを だいじに かって くれる やくそくで、いまの 人に たのんだのだそうです。ところが、そのひとは、いぬなんか せわが やけて きらいだと、くびわを はずして しまったのでした。
この はなしを きくと、ふたりは、
「それでは、じぶんが ころすかわりに、いぬころしに ころさせる つもりじゃ ないか。」
と ふんがいしました。
「ぼくたちが、たすけて やろうよ。うちに、ふるい かわの バンドが あるから、あれを きって、くびわを つくって やる。」
と、たけおくんは いいました。そして、いぬの せを なでながら、
「二郎くん、ごらんよ。くびわなんかの ついて いない、しぜんの ままの ほうが、よっぽど うつくしいと おもわない。」
と、目を ほそく して いいました。
二郎くんは、また なにを かんがえたのか、
「どうぶつは、いつだって、しょうじきで、いつわるような ことは ない…