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こま
こま |
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作品ID | 51571 |
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著者 | 小川 未明 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「定本小川未明童話全集 12」 講談社 1977(昭和52)年10月10日 |
初出 | 「小学四年生」1937(昭和12)年10月 |
入力者 | 特定非営利活動法人はるかぜ |
校正者 | 酒井裕二 |
公開 / 更新 | 2018-01-08 / 2017-12-26 |
長さの目安 | 約 5 ページ(500字/頁で計算) |
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赤地の原っぱで、三ちゃんや、徳ちゃんや、勇ちゃんたちが、輪になって、べいごまをまわしていました。
赤々とした、秋の日が、草木を照らしています。風が吹くと、草の葉先が光って、止まっているキチキチばったが驚いて、飛行機のように、飛び立ち、こちらのくさむらから、あちらのくさむらへと姿を隠したのでした。
けれど、一同は、そんなことに気を止めるものもありません。熱心に、こまのうなりに、瞳をすえていました。
この時刻に、学校の先生が、この原っぱを通ることがあります。みんなは遊びながらも、なんとなく、気にかかるのでありました。見つかれば、しかられやしないかと思うのであるが、また、こんなことをしたっていいという考えが、みんなの頭にもあったのであります。
三人が、夢中になっているところへ、
「おれも入れてくれないか?」と、ふいにそばから、声をかけたものがあったので、びっくりして顔を上げると、それは、黒眼鏡をかけた紙芝居のおじさんでした。
「おれも仲間に入れてくれよ。」と、おじさんは、遠慮しながら、いいました。
「おじさんも、べいをやるのかい。べいを持っているの。」と、勇ちゃんが、ききました。
「ほら。」といって、おじさんは、ズボンのかくしから、光ったべいを出して見せました。
「角のケットンだね。」と、徳ちゃんも、三ちゃんも、たまげたように、おじさんのべいに目を光らせました。
「おら、子供の時分から、こまをまわすのが、大好きなのさ。」
おじさんは、三人の間へ割って入るとかがみました。そして、むしろの上を見ていたが、
「だれのだい、あのダイガンは?」
「あのベタガンは、三ちゃんのだよ。」
「おれは、あいつがほしいものだなあ。」と、黒眼鏡のおじさんは、子供のように、三ちゃんの大きなべいに見とれています。
「おかしいなあ、大きななりをして、べいをするなんて……。」と、徳ちゃんは、おじさんの顔を見て、げらげら笑い出しました。
「なにが、おかしいんだい。おら、子供の時分から、こまは好きなんだよ。それは、こんなのでなくて、木のこまに、鉄の胴をはめたんだ。その鉄の厚みが広いのほどいいとしたもんだ。あの、三ちゃんのダイガンを見ると、おれの持っていた、鉄胴のこまを思い出すよ。」と、おじさんは、いいました。
「その鉄の胴をはめた、こまをどうしたの?」と、勇ちゃんが、聞きました。
「こっちへくるときに、友だちにやってしまった……。なにしろ、十五の暮れに出てきたんだものな。あれから十年も故郷へ帰らないのだ。」
「それで、おじさんは、こっちへきても、べいをしていたのかい。」
「じょうだんな、そんな暇があるかい。小僧をしたり、職工になったり、いろいろのことをしたのさ。この商売をするようになって、昔、こまをまわしたことを思い出して、ときどきべいをするが、おもしろいなあ。」と、おじさんは、子供とい…