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三人と 二つの りんご
さんにんと ふたつの りんご |
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作品ID | 51575 |
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著者 | 小川 未明 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「定本小川未明童話全集 16」 講談社 1978(昭和53)年2月10日 |
初出 | 「セウガク一年生」1939(昭和14)年3月 |
入力者 | 特定非営利活動法人はるかぜ |
校正者 | Juki |
公開 / 更新 | 2012-09-22 / 2014-09-16 |
長さの目安 | 約 2 ページ(500字/頁で計算) |
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「かずおちゃん、どうして なみだを だしたんだい?」
と、たろうさんが ききました。
「よしおさんと しげおさんが ひっぱったんだよ。」
「なんにも しないのに?」
と、きみ子さんが いいました。
「あそびに こいと いって、りょうほうから ぼくを ひっぱったのだ。」
「なあんだ、かずおちゃんが、いなかへ いって きて、めずらしいからだ。」
「いなかの おじいさんも いいけれど、とうきょうの おじいさんも いいな。」
と、たろうさんが いいました。
「おじいさんの ところへ、あそびに いこうよ。」
「ええ、いきましょう。」
おじいさんの おうちは、ちかかったのです。三人は かけだしました。
「おじいちゃま、あそびに きました。」
「よく きた。さあ おあがり。なんにも やる ものが なくて こまった。りんごが 二つ あるから、ちえだめしを して、よく できた ものに 一つ、あとの ふたりに はんぶんずつ やると しよう。」
「むずかしい もんだい?」
「いや、やさしい もんだいだ。おとうさんと おかあさんと、どちらが すきですか。」
いちばん 小さい かずおちゃんが、
「ぼく、おかあさん。」
と、すぐに こたえました。きみ子さんは、
「わたし、わからないわ。」
と こたえました。おとうさんに わるいと おもったからです。
「ぼく、どちらも すき。」
と、たろうさんが こたえました。
「みんな よく できた。」
と、おじいさんは わらいながら いいました。そして、いろいろと かんがえた のちに、
「かずおちゃんが いちばん よく こたえました。ですから、かずおちゃんに りんごを 一つ あげます。あとの ふたりには はんぶんずつ わけて あげます。」
と いいました。