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小さなねじ
ちいさなねじ
著者小川 未明
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 13」 講談社
1977(昭和52)年11月10日
初出「台湾日日新報 夕刊」1941(昭和16)年6月6日、7日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者酒井裕二
公開 / 更新2019-11-29 / 2019-10-28
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 おじいさんは、朝起きると、火鉢に当たりながら、もうそのころ配達されている新聞をごらんになっています。これは、毎朝のことでありました。
 今日も、早く起きて火鉢の前にすわっていられました。外ではうぐいすの声がしていました。
「だいぶ春らしくなったな。この分では、もうじきに桜の花が咲くだろう。」と、独り言をしながら、眼鏡をかけ直して、新聞をひろげていられました。おじいさんは、お年のせいで、眼鏡がなくては、すこしも新聞がお読めになれないのでありました。そのうちに、おじいさんは、急にあわてて、眼鏡をはずして、手であたりをなでまわしながら、なにかさがしていられました。
「おじいさん、どうなさったのですか?」と、正二のお母さんが、これを見て、おききなさいました。
「いや、眼鏡のねじが、どこへかとんでしまってな。」と、おじいさんは、おっしゃいました。
「ありませんか。」と、お母さんは、すぐにそばへきて、いっしょになって、探しなさいました。
「なにしろ、小さいものだから、ちょっとわからないだろう。」と、おじいさんは、片方のつるがはずれて、かけられなくなった眼鏡を持ちながら、困った顔つきをしていられました。
「どうして、とびましたでしょうね。」
「こうして、毎日、幾度となくかけたり、はずしたりするからゆるんだにちがいない。いまに正坊が起きてきたら、さがしてもらいましょう。」と、おじいさんは、それまで新聞を見ることをあきらめなさいました。お母さんも、しばらく、火鉢のまわりや、畳のすきまなどを見てさがしていられましたが、とうとう見つかりませんでした。
「火鉢の中へ落ちたのではないでしょうか?」
「いや、火鉢の中へは入らないと思うよ。ころころところがった音がしたから。」と、おじいさんは、また身のまわりをおさがしになっていました。
「正ちゃん、早くいらっしゃい。」と、お母さんは、顔を洗っていた、正二くんをお呼びになりました。正二くんは、家内じゅうでいちばんだれよりも目がよかったからです。正二くんは、さっそくきました。
「どうしたの。」
「おじいさんの眼鏡のねじが、どこかへとんだから、よく探しておあげなさい。」と、お母さんが、いわれました。
「どんなねじなの、おじいさん。」
 正二くんは、おじいさんの持っていられた眼鏡を自分の手に受け取って、片方についているねじを見ました。それは、小さな、平らな頭に溝のついているものでした。
「白く、光っているのだね、じゃ、わかるだろう。」
 それから、正二くんは、熱心にへやのすみずみまでさがしたのでありました。しかし、やはり見つかりませんでした。
「どこへいったろう。おかしいな。」と、正二くんは、いくら探しても見つからないねじを不思議がりました。
「これほど探してもなければいい。」と、おじいさんは、いわれました。
「ほんとうに、おかしいですね。とん…

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