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つづれさせ
つづれさせ
作品ID51618
著者小川 未明
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 13」 講談社
1977(昭和52)年11月10日
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者酒井裕二
公開 / 更新2019-12-11 / 2019-11-24
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 お祖母さんは、あかりの下に針箱をおき、お仕事をなさっていました。そのうち、押し入れから行李を出し、なにか、おさがしになりました。
「おばあさん、なにをなさるの?」と、武ちゃんはいいました。
「つづれさせが鳴くから、うかうかしていられません。」と、おっしゃいました。
「つづれさせって?」
「ほら、リーリーと、鳴くでしょう。」
「こおろぎのこと、どうして、つづれさせっていうの?」と、武ちゃんが、聞きました。
「あの鳴きごえを、昔の人は、じき寒くなるから、冬の仕度をせよ、と聞いたので、こおろぎを、つづれさせというのです。」と、お祖母さんは、お答えになりました。
「昔って、遠い前のことなの?」
「そう、おばあさんの、そのまたおばあさんのころから、夜が長くなると、みんな、よなべをしたものです。」
 武ちゃんは、だまって、リーリーと鳴く、こおろぎの声を、聞いていました。
 いい月夜で、窓のかきの葉が、黒くうつりました。



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