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こいのぼりと鶏
こいのぼりとにわとり
著者小川 未明
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 4」 講談社
1977(昭和52)年2月10日
初出「コドモアサヒ」1924(大正13)年5月
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者栗田美恵子
公開 / 更新2019-05-05 / 2019-04-26
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


 泉水の中に、こいと金魚が、たのしそうに泳いでいました。しかし、黒いねこが、よくねらっていますので、ゆだんができませんでした。いつ、つかまえられて、食べられてしまうかしれないからです。
「私が、見張りをしてあげましょう。」と、毎日、泉水のほとりで遊んでいる鶏がいいました。鶏は、すばしこかったから、けっして、ねこにとらえられるようなことはありませんでした。
「どうぞ、おたのみいたします。」と、こいと、金魚はいいました。
 鶏は、毎朝小舎の屋根に飛び上がって、いい声で、ときをつくりました。そして、黒いねこが泉水の近くを歩いていると、コケッコ、コケッコといって、泉水の中の金魚や、こいにも、注意をしたのであります。
 すると、金魚も、こいも、水の中に深く、くぐってしまいました。
「なんと羽のあるものは、自由じゃないか。」と、鶏はいって、金魚や、こいに対して、威張りました。金魚や、こいは、なんといわれてもしかたがなかったのです。
「あなたは、ほんとうにえらい。」といっていました。
 ある朝、金魚や、こいが目をさまして、上を見ますと、小舎より、もっと高く、空に大きなこいのぼりが、ひらひらとしていました。こいは、これを見ると、喜びました。
「あんなに、大きな仲間が、あすこへやってきた。もう、鶏のお世話にならなくても、あの仲間が、黒ねこのきたのを知らせてくれるだろう。」と、こういいました。
「鶏さん、長い間、ありがとうございました。しかし、私らの仲間が、あんなに高いところへきたから、もうだいじょうぶです。」と、こいが、鶏に向かっていいますと、鶏も、これからは威張られなくなったと、元気がありませんでした。
 太郎さんは、その晩、こいのぼりを家へいれるのを忘れました。そして、夜中から、ひどい雨になったのであります。
 夜が明けてから、金魚や、こいが上を見ますと、大きなこいのぼりは、雨にぬれて破れて見る影もありませんでした。
「おまえの仲間というのは、あれは、なんだい。」と、鶏はいって笑いました。そして、勝ちほこったように、小舎の屋根へ上がって、ときをつくりました。



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