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チューリップの芽
チューリップのめ
著者
文字遣い新字新仮名
底本 「定本小川未明童話全集 4」 講談社
1977(昭和52)年2月10日
初出「子供之友」1924(大正13)年3月
入力者特定非営利活動法人はるかぜ
校正者栗田美恵子
公開 / 更新2019-05-05 / 2019-04-26
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


 チューリップは、土の中で、お母さんから、世の中に出てからの、いろいろのおもしろい話をきいて、早く芽を出したいものと思っていました。
「ちょうちょうは、どんなに、美しいの?」と、お母さんにたずねたりしました。
「そんなに、いそいではいけません。いい時分になったら、お母さんがいってあげます。それまでは、おとなしくして、待っておいでなさい。」と、お母さんは、さとされました。
 けれど、今年出るチューリップは、がまんしていることができませんでした。
「お母さん、もう、芽を出してもいいでしょう。」といいました。
「いいえ、まだ、いけません。」と、お母さんは許されなかったのです。
 けれど、とうとうチューリップは、がまんができなくなって、銀色のかわいらしい芽を土の上へ出しました。
 なんという明るい世界でありましたでしょう。けれど、まだ、すこし早かったので、太陽は遠く、風が寒うございました。かわいらしいチューリップは、身ぶるいしなければなりませんでした。
 しかし、一度、芽を出したからは、もはやどうすることもできませんでした。チューリップは、土の中の暗い世界が恋しくなって、お母さんのいうことを聞かなかったことを後悔しました。
 このとき、畑をみまってきた、しんせつなおじいさんは、チューリップの芽が、ふるえているのを見て、「ああ、まだすこし早い。いま出たら霜に傷んでしまおう。」といって、くわで、チューリップの頭の上へ、土をかけてくれました。
 チューリップは、ふたたび、暖かな世界へはいって、春のくるのを待つことになりました。



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