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日本民芸館について
にほんみんげいかんについて
作品ID51823
著者柳 宗悦
文字遣い新字新仮名
底本 「民藝とは何か」 講談社学術文庫、講談社
2006(平成18)年9月10日
入力者Nana ohbe
校正者仙酔ゑびす
公開 / 更新2012-08-03 / 2014-09-16
長さの目安約 15 ページ(500字/頁で計算)

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本文より



 私はよくこういうことを想像します。もし民藝館のような仕事を誰か他人が何処かで企てているとしたら、どんなに私は感心するであろうかと。そうして誰にも劣らず讃辞を惜しまないであろうと。そうして啻にたびたびそこを訪れるのみならず、進んで広く紹介する役割をかって出るであろう。陳列を終る時、私はよくそう考えるのです。これを強ち自分に酔う愚かな者の空想だと思うわけにゆきません。それほど民藝館の仕事に私達は一つの信念を抱いているのです。
 民藝館は日本における唯一の存在なのです。こういう性質の美術館は、かつて企てられたことがありませんでした。当然存在しなければならないので、私達が代ってその任務を果しているのです。啻に日本において唯一のみならず、世界でも類例の稀な存在だと思っています。私共は随分世界の美術館を見ましたが、多少似たものはありますけれど、この民藝館のように美の目標を定めて、統一された蒐集と陳列とを行っているものはないように思います。未だ出発でありますから規模は小さくありますが、あるいはこの位の程度の大きさの方が、かえって鑑賞されるには適宜かと思われます。



 それならどういう点で他の美術館と違うのか。どんな美術館でも、事情の許す限りいい品を集め、それを陳列しようと欲していることに変りはありません。ですが「いい品」とは何なのかということになると、実に曖昧なのです。ある人は歴史的に貴重だということに重きを置き、ある人は伝来の由緒を尊び、ある人は在銘のものを敬い、ある人は技巧の精緻なものを美しいとし、ある人は稀だということに心を惹かれ、ある人は完全な品だということに貴さを見るのです。いわば色々な立場があって、色々なものが集っているのです。美術館が大きくなり、館員が増すにつれ、ますます見方が区々で統一を保つことが困難なのです。色々の異る意味でいい品が集めてあるということで満足するなら、それでもよいのですが、しかしいい品と見做すその根拠が大概の場合実に薄弱なのです。なぜなら歴史的に有名なもの必ずしも美しくはありません。由緒の深いもの、在銘のもの、皆いい品だとは云われません。技巧の勝ったもの常に優れた作だとは云えません。技巧と美しさとは必ずしも一致してはいないからです。また稀な品や完全な品を非常に大事にする人がありますが、それ等のものが必ずしも常に美しいとは限りません。珍しいものは本筋のものでなかったり、完全なものが冷たかったりする例は実に夥しいのです。ですからそういう立場で、ものを選ぶということは基礎が弱いのです。その結果はどうかというと、必ず選択が玉石混淆に陥るのです。立派なものの傍らに見るに堪えない品が列んでいる例は余りにも多いのです。見方が本質的なものを欠くからだと思います。こういう意味で真に統一のある美術館は稀の稀なのです。美術館でありながら醜い品を列…

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