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五百五十句
ごひゃくごじっく
作品ID51838
著者高浜 虚子
文字遣い新字旧仮名
底本 「虚子五句集(上)〔全2冊〕」 岩波文庫、岩波書店
1996(平成8)年9月17日
入力者岡村和彦
校正者酒井和郎
公開 / 更新2016-08-06 / 2016-06-10
長さの目安約 43 ページ(500字/頁で計算)

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本文より



 さきに『ホトトギス』五百号を記念するために改造社から『五百句』という書物を出した。これは私が俳句を作りはじめた明治二十四、五年頃から昭和十年までの中から五百句を選んだものであった。先頃桜井書店から何か私の書物を出版したいとの事であったので、『ホトトギス』が五百五十号になった記念に、その後の私の句の中から五百五十句を選み出してそれを出版して見ようかと思い立った。思い立ってから大分日がたった。この月出ている『ホトトギス』は五百六十一号になっている。それはどうでもいいとして、昭和十一年から昭和十五年まで約六年間の間に五百五十句を選んだのであるから、前の『五百句』の約四十五年の間の句の中から五百句を選んだのに比較して見て少し精粗の別がないでもないが、要するに記念のための出版であって、その他の事は格別厳密に考える必要もないのである。『五百五十句』という書物の名にしたけれども五百七、八十句になったかと思う。それも厳密に考える必要はないのである。
 私は本年古稀である。自ら古稀の記念ともなったわけである。

昭和十八年五月十九日
鎌倉草庵にて
高浜虚子
註 改造社発行拙著『五百句』の百六十一頁「天の川」の句は取消す。
[#改丁]
[#ページの左右中央]



昭和十一年

[#改ページ]



鴨の中の一つの鴨を見てゐたり
一月二日 武蔵大沢浄光寺。旭川歓迎会。

枯れ果てしものの中なる藤袴
一月四日 百花園偶会。水竹居、あふひ、花蓑、実花。

物売も佇む人も神の春
一月五日 武蔵野探勝会。目黒不動、大国家。

枯荻に添ひ立てば我幽なり
一月八日 謡俳句会。百花園。

渋引きしごと喉強し寒稽古
一月十八日 谷中本行寺。播磨屋一門、水竹居、たけし、立子、秀好。

古綿子著のみ著のまゝ鹿島立
二月十六日 楠窓東道の下に、章子を伴ひ渡仏の途に上る。午後三時横浜解纜箱根丸にて。

我心春潮にありいざ行かむ
二月十九日 神戸碇泊。花隈、吟松亭、関西同人句会に列席。

日本を去るにのぞみて梅十句
二月二十一日 朝、門司著。萍子招宴、三宜楼。

上海の霙るゝ波止場後にせり
二月二十六日 箱根丸船中。

春潮や窓一杯のローリング
二月二十九日 朝、香港出帆。

顔しかめ居る印度人町暑し

著飾りて馬来女の跣足かな

裸なる印度ますらを幸きくあれ

晩涼や火焔樹並木斯くは行く
三月四日 新嘉坡著。石田敬二、東森たつを来訪。次で三井物産支店長松本季三志夫妻、三菱商事支店長山口勝、宮地秀雄等来船。敬二東道の下に章子を帯同、一路自動車にて奥田彩坡経営の士乃の護謨園を訪ふ。横光利一同道。帰途タンジヨン・カトンの玉川ガーデン、敬二居等に立寄り、今日の吟行地植物園に下車。それより空葉居に一憩、新喜楽にて晩餐。俳句会。

稲妻のするスマトラを左舷に見
三月五日 新嘉坡碇泊。日本人共同墓地に二葉亭…

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