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七百五十句
しちひゃくごじゅっく
作品ID51839
著者高浜 虚子
文字遣い新字新仮名
底本 「虚子五句集(下)〔全2冊〕」 岩波文庫、岩波書店
1996(平成8)年10月16日第1刷
入力者岡村和彦
校正者木下聡
公開 / 更新2024-04-08 / 2024-04-03
長さの目安約 43 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

[#ページの左右中央]



昭和二十六年


[#改ページ]



緑竹に蒼松にある冬日かな
一月四日 ホトトギス、玉藻、花鳥堂社員来。

旧正の草の庵の女客

羽子つこか手毬つこかともてなしぬ
二月一日 まり千代、小くに、五郎丸、小時、実花来。

白梅の光り満ちたる庵かな
二月二十六日 句謡会。草庵。

鵯の木の間伝ひて現れず
三月二日 明女、久子等静岡勢来る。

我君と共に老いたり梅も亦
三月十三日 泊月句集序句。

鶯のしば鳴く庵と答ふべし
三月十六日 偶成。

藪の穂に春日遅々とわたりをり
三月十九日 土筆会。草庵。

ゆらぎ見ゆ百の椿が三百に

汝に謝す我が眼明かいぬふぐり
三月二十一日 鎌倉玉藻会。英勝寺。

いぬふぐり空を仰げば雲も無し
三月二十六日 大崎会。英勝寺。

家桜顧みしつゝ立ち出づる

落椿土に達するとき赤し
三月三十日 東京多摩会。英勝寺。

ふと春の宵なりけりと思ふ時
四月四日 全国医師大会俳句会。向島、大倉。

花の館われ住むべくもあらぬかな

独り居る館の二階や山桜
四月八日 葉山、嵯峨邸。

庭に下り話しつゞける蝶は飛ぶ
四月九日 大崎会。英勝寺。

諸事は措き牡丹に心うつしけり
四月十一日 即事。

落花土に帰し蟻の這ふ地となれる

この牡丹卑しけれども杖を立て
四月十三日 句謡会。草庵。

牡丹の日々の衰へ見つゝあり

牡丹に所思あり稿を起さんと
四月二十五日 草樹会。大仏殿。

卯の花を仏の花と手折りもし
五月七日 大崎会。英勝寺。

新緑の瑞泉寺とやいざ行かん
五月二十日 草間新市長祝賀俳句会。

不思議やな神鳴るなべに菌生え
五月二十三日 草樹会。大仏殿。

建増や軒端の梅は移さずに
五月三十一日 句謡会。笹目、立子俳小屋開きを兼ね。

手を頬に話きゝをり目は百合に
六月二日 日本銀行大仏句会。大仏殿。

鉄線の蕊紫に高貴なり
六月十日 鎌倉玉藻会。寿福寺。

梅雨晴間絶えて久しき友来る
六月二十日 土筆会。草庵。

温泉に入りて唯何となく日永かな
六月二十二日 米和歌にあり。

朴散華而して逝きし茅舎はも

くちなしを艶なりといふ肯はず
六月二十五日 九羊会。茅舎を偲ぶ会。立子俳小屋。

夏花とて先づ手近なるものを剪り
六月二十八日 句謡会。立子俳小屋。

鉄線の花は豪雨に堪へゐしか
七月三日 即事。

洗髪束ね小さき顔なりし
七月七日 艶寿会。

ひろ/″\と富士の裾野の西日かな
七月二十七日 昨日より山中湖畔下り山、山廬滞在。稽古会。

山荘もこぼたずありし来れば涼し

うつし世の老いし柳に心とめ

下り山柳の家と尋ね来よ

山風に吹きさらされて昼寝かな

老柳に精あり句碑は一片の石
七月二十八日 山中湖畔下り山、山廬滞在。稽古会。

避暑の宿落葉松林とりかこみ
七月二十九日 新蕎麦会有志合同、稽古会。

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