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国訳史記列伝
こくやくしきれつでん
作品ID51921
副題01 伯夷列伝第一
01 はくいれつでんだいいち
著者司馬 遷
翻訳者箭内 亙
文字遣い旧字旧仮名
底本 「國譯漢文大成 經子史部第十五卷 史記列傳」 東洋文化協會
1955(昭和30)年5月30日
入力者はまなかひとし
校正者みきた
公開 / 更新2020-07-17 / 2022-01-28
長さの目安約 20 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

箭内亙による譯夫れ(二)學は載籍極めて博けれども、猶ほ信を六[#挿絵]に考ふ。(三)詩書(四)缺けたりと雖も、然れども(五)虞夏の文知る可き也。堯將に位を(六)遜れんとするや、虞舜に讓る。(七)舜禹の間(八)岳牧咸薦む。乃ち之を(九)位に試み、職を典らしむること數十年、(一〇)功用既に興り、然る後政を授く。天下は(一一)重器・王者は(一二)大統・天下を傳ふる斯の若きの難きを示したる也。而るに(一三)説く者曰く、『堯、天下を許由に讓りしが、許由受けず、之を恥ぢて逃げ隱る。(又 )(一四)夏の時に及んでは、卞隨・務光なる者有りき』と。此れ(一五)何を以て稱せられたる。(一六)太史公曰く、余、箕山に登りしに、其上に蓋し許由の冢有りと云ふ。孔子、古の仁聖賢人を(一七)序列する、呉の太伯・伯夷の倫の如きも詳なり。余の聞く所を以てすれば、(一八)由光の義至つて高し。(一九)其文辭少しも概見せざるは何ぞ哉。
孔子曰く、(二〇)『伯夷・叔齊は舊惡を念はず、怨み是を用て希なり。仁を求めて仁を得たり。又何をか怨みん』と。余、(二一)伯夷の意を悲しむ、(二二)軼詩を睹るに異しむ可し。(二三)其傳に曰く、伯夷・叔齊は(二四)孤竹君の二子也。父、叔齊を立てんと欲す。父卒するに及んで、叔齊、伯夷に讓る。伯夷曰く、『父の命也』と。遂に逃れ去る。叔齊も亦立つを肯んぜずして之を逃る。國人、其中子を立つ。是に於て、伯夷・叔齊、(二五)西伯昌善く老を養ふと聞き、(曰ク)『盍ぞ往いて歸せざる』と。至るに及んで西伯卒す。武王、(二六)木主を載せ、號して文王と爲し、東のかた(二七)紂を伐つ。伯夷・叔齊(二八)馬を叩へて諫めて曰く、『父死して葬らず、爰に(二九)干戈に及ぶ、孝と謂ふ可けんや。臣を以て君を弑す、仁と謂ふ可けんや』と。(三〇)左右(三一)之を兵せんと欲す。(三二)太公曰く、『此れ義人也』と。扶けて去らしむ。武王已に殷の亂を平げ、天下、周を(三三)宗とす。而るに伯夷・叔齊之を恥ぢ、義、周の(三四)粟を食はず、首陽山に隱れ、薇[#「薇」の左に「ゼンマイ」のルビ]を采つて之を食ふ。餓ゑて且に死せんとするに及んで歌を作る。其の辭に曰く、『彼(三五)西山に登り、其薇を采る。(三六)暴を以て暴に易へ、其の非なるを知らず。神農・虞(舜 )・夏(禹 )(三七)忽焉として沒しぬ、(三八)我安くにか適歸せん。吁嗟(三九)徂かん。(四〇)命の衰へたるかな』と。遂に首陽山に餓死せり。此に由つて之を觀れば(四一)怨みたるか非か。
(四二)或は曰く、(四三)天道は親無く、常に善人に與すと。伯夷・叔齊の若きは、善人と謂ふ可き者か非か。仁を積み行を潔うし、此の如くにして餓死せり。且つ(四四)七十子の徒、(四五)仲尼獨り顏淵を(四六)薦め、學を好むと爲す。然れども(四七)回や屡[#挿絵]空しく、糟糠にだも厭かず、而して卒に(…

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