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友だちどうし
ともだちどうし |
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作品ID | 52095 |
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著者 | 小川 未明 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「定本小川未明童話全集 11」 講談社 1977(昭和52)年9月10日 |
初出 | 「児童文学」1937(昭和12)年1月 |
入力者 | 特定非営利活動法人はるかぜ |
校正者 | 酒井裕二 |
公開 / 更新 | 2017-01-24 / 2016-12-09 |
長さの目安 | 約 5 ページ(500字/頁で計算) |
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乳色の冬の空から、まぶしいほど、日の光は大地へ流れていました。風のない静かな日で雪のない国には、やがて、春が間近へやってくるように感ぜられるのでありました。
年ちゃんは、紅茶の空きかんの中へ、ガラスのおはじきを入れていましたし、正ちゃんは、ほうじ茶の紙の空き袋の中へ、ガラスのおはじきも入れていれば、また、秋の暮れにお宮の大きな木の下で拾った、銀杏の実も入れていました。
毎朝、洗い清められる玄関の外のアスファルトの上に、二人はしゃがみながら、たがいにおはじきを出して見せ合ったり、取りっこをしたりして、遊んでいました。年ちゃんの持っている、青い色のおはじきは、町へお母さんといっしょにお使いにいって買ってもらったもので、眼鏡のようにして、すかして見ると、空も、家も、木も、うす青く、遠く、遠く、なって見えるので、年ちゃんは魔法の眼鏡と自分で呼んでいる、大事な、そして、好きなおはじきでありました。また、正ちゃんの銀杏の実は、自分が木から落ちたのを拾って、いいのだけを択んだもので、たとえおはじきを五個でも、一粒の銀杏の実とは換えがたい貴いものでありました。二人は楽しそうに、自分のものを出したり、入れたりして、自慢しあって、仲よく笑っていたのです。
そこへ、見知らぬ、一人の少年がやってきました。
「なにしているの?」と、さもなつかしそうに、少年は、いい寄りました。
「おはじきをしているのだよ。」と、年ちゃんが、少年を見ました。
「僕も、仲間に入れてくれない?」と、少年は、頭を傾けて、二人の顔を見たのであります。
いかにもその少年は、弱々しそうであり、さびしそうでもありましたから、「ああ、お入りよ。」と、正ちゃんがいいました。
少年は、喜んで、二人と並んで、アスファルトの上へしゃがみました。
このとき、年ちゃんが、「君の家は、どこだい?」と、少年に、ききました。
なぜか、少年は、恥ずかしそうにして、だまっていました。
「町の方?」と、正ちゃんが、いいました。少年は、だまって、ただうなずきました。
「僕に、おはじき三個ばかり、貸してくれない?」と、少年は、正ちゃんの顔を見ました。
「君、おはじき持っていないのかい。」と、正ちゃんは、少年にいって、年ちゃんと相談するように顔を見合わせました。
「どうしたら、いいだろう?」と、心に思ったからです。断るのも、なんだか意地悪に感ぜられるし、また、これまで話したこともない、少年が、おはじきを持たずに、仲間へ入れてくれというのも、ずるいような、まちがっているような、気がしたからです。しかし、おはじきの上手な年ちゃんは、自信を持っていました。
「いいから、貸しておやりよ。正ちゃんが二個、僕が二個、貸してやろうよ。」と、年ちゃんが、いいました。
「貸してくれる? ありがとう。」と、弱々しい、青い顔の少年は、急に目を輝かして、お…