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四つの道徳
よっつのどうとく
作品ID52171
著者大杉 栄
文字遣い新字新仮名
底本 「大杉栄全集 第14巻」 日本図書センター
1995(平成7)年1月25日
初出「家庭雑誌 五巻四号」1907(明治40)年2月
入力者笹平健一
校正者持田和踏
公開 / 更新2022-01-17 / 2022-08-20
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 小児が河の中に溺れている。そこを四人の人が通り掛かる。
 その一人は思った。自己はただ自己のためにすれば善い。彼はそ知らぬ顔をして通り過ぎた。
 もう一人は考えた。もしあの児を助けたら、神様はきっと何かの褒美を下さるに違いない。彼はただちに水の中に飛び込んだ。
 もう一人も考えた。人の満足には、内的満足と外的満足との二種類がある。しかして、人を助けるのはその前者に属して、永久に続くところの快感を得る道である。救わざるべからず。彼もまた、ただちに水の中に飛び込んだ。
 もう一人は、幼少の頃より自己は人類の一分子であると教えられている。したがって、人の苦痛は即ち我が苦痛である、人の幸福は即ち我が幸福であると感じている。されば、その小児の叫び声を聞くや否や、何等の考うるところなく、ほとんど無意識に水の中に踏り込んだ。



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